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横浜市/未着手3路線の中間とりまとめを

2013/04/23 日本工業経済新聞(神奈川版)

 横浜市が、市内を走る鉄道やバスなど、市の将来を見据えた交通体系のあり方を考える一環として設置する専門家で成る次世代の総合的な交通体系検討会(議長・屋井鉄雄東京工業大学大学院教授)は19日、一般財団法人運輸政策研究機構(東京都港区)において第4回検討会を開催した。平成12年の運輸政策審議会(当時)の答申路線で、取り上げられ、未着手となっている高速鉄道3号線延伸、横浜環状鉄道(仮称)の新設、東海道貨物支線旅客線化の3路線に関する需要見通しや収支予測などに関する中間まとめについて意見を交わした。

 検討会は、運政審での目標年次(27年度)が2年後に迫っていることや、人の動きを調べるパーソントリップ調査に基づく利用者の行動特性の変化。市の厳しい財政状況のなか、求められる行政コストの適正化、選択と集中による交通基盤の整備、持続可能な財政運営。中央新幹線の手続き開始、羽田空港の国際化など交通環境の変化が起きていることを背景に23年度に設置された。

学識者に、市都市整備局及び政策局の担当職員、県県土整備局の職員らで成り、国交省の担当職員、鉄道建設・運輸施設整備支援機構、横浜高速鉄道㈱、横浜市交通局の担当職員がオブザーバーとして加わっている。

 未着手となっている3路線は、高速鉄道3号線延伸(市営地下鉄3号線あざみ野からすすき野付近、そこから目標年次までに整備着手することが適当である路線とされる川崎市麻生区新百合ヶ丘付近の約7㌔)。

 横浜環状鉄道(市営地下鉄グリーンラインとして開業の一部区間を含む元町から根岸、上大岡、東戸塚、二俣川を経て中山。元町~中山間約28㌔、日吉~鶴見間約7㌔)。

 東海道貨物支線の旅客線化(東京テレポート・品川~東京貨物ターミナル~桜木町間約33㌔)。

 3路線に関する中間とりまとめは、これまでの議論を踏まえ当局の市が作成したもの。

 3号線は需要予測について、事業費は全線シールドと、山岳工法を併用した場合で試算し、概ね1300億円から1500億円(キロ当たり平均単価は190億円~220億円)と見積もった。収支予測は、3号線は23年から31年目で黒字転換と結果が出た。便益は3号線から1・6~1・8の数字となった。

 環状鉄道は、事業費試算で、元町・中華街~根岸は普通鉄道(みなとみらい線の延伸)、根岸~中山間及び日吉~鶴見間は小型鉄道(グリーンラインの延伸)で計算し、概ね6600億円~7200億円となった。費用便益は1・0~1・2と結果。ただ、全線の整備には多額の費用と長い時間を要するため、今後、区間ごとに深度化した検討などが必要と結んだ。

 3号線、環状鉄道とも市としては、まちづくりなど総合的な評価が必要であり、この数値のみでの評価はできない、さらに検討を進める必要があると考えを示した。

 一方、東海道貨物支線の旅客線化等は、需要規模の試算にあたっては、多くの自治体にまたがる長い路線であることや、沿線の土地利用の将来像など前提条件に不確定要素が多く、確度の高い試算が困難な状況であるため、今後、沿線自治体で構成される「検討協議会」と連携しながら検討を進める必要があるという判断を示した。

 また、3路線を含めた次世代の交通体系全体の方向性では、既設鉄道路線の改良・活用。既設駅の改良・活用と新駅整備。結節点(駅)における異なる交通手段との連携。鉄道整備とまちづくりの連携のあり方等をテーマに検討を重ねることとした。







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