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千葉県浦安市

実証実験結果公表/民間の液状化対策工法/浦安市が公募し7事業者が参加

2013/06/10 日刊建設タイムズ


 浦安市はこのほど、市が管理する施設を利用して民間が昨年度行った、液状化対策工法実証実験の成果報告(概要)を公表した。同市では、東日本大震災による液状化により多くの建物が被害を受け、今後、その対策が急がれているが、具体的な工法については開発途上のものが多い。このため、民間企業による液状化対策工法の研究・開発を支援することを目的に、市が運動公園等の土地を提供して、民間7事業者による液状化対策工法の実証実験が行われた。液状化対策に関しては、市も昨年度、高洲地区の県企業庁所有地を利用して地下水位低下工法の実証実験を行っているが、同工法を用いた液状化対策は困難だとして、コスト面に課題はあるものの、格子状地中壁工法を中心にした対策の説明会を4月から行っている。

 市の施設を利用した実証実験は、民間企業の研究を後押しする目的で、市が運動公園陸上競技場予定地等を提供し、公募で選ばれた①飛島建設・兼松日産農林・昭和マテリアル(以下、飛島建設グループ)②前田建設工業③旭化成建材④大成建設⑤住友林業・住友林業アーキテクノ・日新製鋼・日新鋼管(以下、住友林業グループ)⑥三信建設工業・みらい建設工業・東興ジオテック(以下、三信建設工業グループ)⑦竹中工務店の7事業者(順不同)が行った。

 飛島建設グループの工法は、「丸太打設液状化対策&カーボンストック工法」。低振動・低騒音タイプの小型施工機械を用いるため、市街地の比較的狭い個所での施工が可能だとしている。実証実験を通して基本的な設計・施工方法が確立でき、現在、第三者機関による技術審査証明を取得中で、今後、施工実績を増やし、必要があれば改良を加え、広く普及を目指す。

 前田建設工業の工法は、「マルチジェット工法」。重要施設の耐震補強工事を中心にすでに実績があり、東日本大震災でも用いられているが、既設戸建て住宅向けに、より経済的・効果的な液状化対策工法を開発する研究の一環として、超小型マシンを開発して実証実験を行い、一定の成果を確認した。超小型マシンの品質の信頼性向上のため、施工データを蓄積することを目的に、本年度も実証実験を計画している。

 旭化成建材の工法は、①密度増大工法(ドライモルタル締固め工法)②超小型施工機を用いた機械式攪拌による地中連続壁工法③マイクロバブル水による液状化対策工法。①に関しては、さらに実証を重ねデータを収集し、公的機関による技術審査証明の取得を目指すとともに、②はより高品質・高効率の地中連続壁を築造可能な施工機械の開発、③は地下水位低下との併用工法の検討を進める。

大成建設の工法は、「WinBLADE工法(地中拡翼型の地盤攪拌改良工法)」。地中で開閉が可能な攪拌翼を使用し、セメントミルクと原地盤を混合攪拌することで、円柱状の団結改良体を造成する工法。地盤の不均一性により一部改良品質のばらつきが見られたものの、実験場所の地盤の特徴でもある「粘土・砂が互層で堆積し、植生跡の異物を含む浚渫埋立て層」の施工に関して、貴重なデータを得ることができたとしている。

 住友林業グループの工法は、「薄鋼矢板による液状化被害軽減工法」。戸建て住宅の基礎下を薄い鋼矢板で囲い、基礎と矢板の隙間を塞いで、構造物と地中の地盤を疑似的に一体とすることで、液状化した地盤の中でヨットのような地中錘の安定で不同沈下を抑制し被害軽減を図る工法。今後もさらに、大学や行政機関との共同研究を重ねるなどして、「200万円/棟」での工事提供を目指す。

 三信建設工業グループの工法は、「戸建て住宅の液状化対策としての適用性を確認するためのコンパクショングラウチング工法(CPG工法)」。既設構造物に対する液状化対策工法として多くの実績があるが、戸建て住宅への適用性を確認するため実証実験を行った。実証実験を通して、従来のCPG工法よりも安価に対策を行えるようになったとしており、さらに性能・品質を高め、同工法による戸建て住宅の液状化対策を提案する。

 竹中工務店の工法は、「高圧噴射攪拌工法による格子状地盤改良工法(コンパクト・ジオラティス工法)」。既存建物下や道路下への液状化対策として用いる格子状地盤改良に適した高圧噴射攪拌工法(実証実験ではV-JET工法を採用)の施工性、施工品質の確認を目的に実験を行った。今後、改良体密着部の一体性、施工管理装置の構築、土質・地盤の硬軟に応じた詳細な改良仕様の検討といった課題点を検証し、実プロジェクトへの適用を図るとしている。


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