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建設業労働災害防止協会

死亡災害すでに11人/前年同期比4人増、8人が墜落・転落/県内建設業5月末速報値/全産業の52・4%

2013/06/25 日刊建設タイムズ


 5月末の速報値によると、県内建設業における死亡災害は前年同期に比べて4人増の11人で、そのうちの8人が在来型の「墜落・転落災害」であることがわかった。約350人が参加し、21日に千葉県文化会館で開いた建設業労働災害防止協会千葉県支部千葉分会(伊藤靖雄分会長)の「第42回安全大会」の席で、泉豊彦・千葉労働基準監督署長が来賓あいさつで述べたもの。氏によると、5月に発生した県内全産業での死亡災害4件のうち、建設業が3件を占めることから、「死亡労働災害の撲滅」こそが、今まさに建設業にとっての最重要課題と言える。伊藤分会長は、前日までに全国で2044人が緊急搬送され、既に3人が死亡している「熱中症」対策について、「万全を期して現場に乗り込む指導の徹底」を呼びかけた。



 建災防千葉分会第42回安全大会

 建設業の労働災害は、依然として全産業の中で高い比率を占めているが、千葉署管内の2011年の確定値と12年の確定値を比較すると、死亡災害は3件で横ばい、休業4日以上災害は34件で20%減少したという。

 しかし、建設業における労働災害発生状況は増加傾向にあり、国が策定した第12次労働災害防止計画に基づき、建災防では第7次建設業労働災害防止5か年計画を策定。ともに初年度にあたり、リスクアセスメントの確実な実施と安全衛生教育、マネジメントシステム『コスモス』の導入・実施、三大災害の撲滅運動、建設業労働災害防止規程の順守を基本方針とした。

 第12次労働災害防止計画で重点業種にあたる建設業は、全体目標の15%減少よりもさらに厳しい「20%以上の減少」を目標としたことに対して伊藤分会長は、「当分会としてもさらなる安全活動を実施し、労働災害の撲滅を推し進めていきたい」との方針を示した。

 6月の準備期間に引き続き、7月1日から7日まで実施される「全国安全週間」について、「人命尊重という崇高な基本理念のもと、産業界における自主的な労働災害防止活動を推進するとともに、広く一般の安全意識の高揚と、安全活動の定着を図ることが目的」とした氏は、「繰り返し型災害、とりわけ在来型の墜落・転落による災害が増加傾向にある」と指摘したうえで、その対策強化を図るには、「不安全行動等の防止のための安全衛生教育の徹底で労働災害撲滅に取り組むとともに、改めて日頃の安全衛生活動の在り方を見直し、会員事業場の安全意識をさらに高めるため、本日の安全大会を実り多きものにして頂きたい」と呼びかけた。

 一方、サッカー日本代表の「本田圭祐の言葉に非常に印象的なものがあったので紹介する」とした氏は、3月と5月の壮行試合の敗戦から、「人間誰にも気の緩みがある。どうしたら気を引き締められるか。どれだけ準備が出来て、その準備に対してくどいほどに自問自答すると答えていたが、我々建設業の労働災害とまったく同じだと感じた」と弁。

 さらに、「一人ひとりがサッカー日本代表選手と同じように、『我々は現場での代表選手として準備は大丈夫か』と、くどいほどに自問自答していくことで、第12次労働災害防止計画の中にある20%の減少とそれ以上の減少が実現出来ると信じている」と述べ、あいさつを結んだ。


 【泉豊彦・千葉労働基準監督署長のあいさつ要旨】

 県内では、1989年(平成元年)から昨年までに、全国の約3・8%にあたる1667人が全産業における労働災害で亡くなっている。全国の建設業における労働災害は、長期的には減少傾向にあり、12年の死亡者数は367人で、前年度比25人増加、全産業では69人増加した中で、他の産業に比べて増加割合も高くなっているが、千葉県における建設業での死亡災害は14人と、前年より3人増加。千葉監督署の管内の死亡災害の状況は、全産業で9人、建設業では3人で、前年と比べると増減なしだった。

 死亡災害ゼロを達成出来なかったことは誠に残念ではあるが、全産業で増加した中で、増加せずに済んだということは、これもひとえに皆さんをはじめ、関係者各位の努力の賜物と敬意を表する次第である。

 しかし、建設業が全産業の死亡災害に占める割合は、本県でも38・9%であり、業種別では依然として最も高く、休業4日以上の被災者数も昨年は、前年に比べて増加している。

 本年からスタートする12次防の計画においては、伊藤分会長があいさつで触れた通り、全産業の全体目標とは別に、建設業については死亡災害の目標は設けられている。今後とも建設業における労働災害防止活動を以前にも増して積極的に実施し、あってはならない死亡労働災害を根絶していく必要がある。

 今年に入って県内では、5月末の速報値によると、全産業で21人の死亡災害が発生しており、前年同期に比べて4人、23・5%の増加。このうち建設業においては、52・4%を占める11人にも達しており、前年同期に比べて4人増加となっている。この11人中の8人(72・7%)が墜落・転落災害である。5月だけでも全産業で4人の死亡災害が発生したが、そのうち3人は建設業である。「死亡労働災害の撲滅」が、今まさに最重要課題となっている。

 こうしたことから、全国安全週間に合わせて、千葉労働局長メッセージが出された。これは平成に入ってから初めてだと思う。今後は台風や梅雨の天気で工期にも苦労されると思うが、工事現場における墜落・転落災害、重機災害防止対策や、夏場の猛暑の中での屋外や屋内での作業においての熱中症予防対策、肌を露出して汗ばんだ状態での感電災害防止対策を確実に励行して頂きたい。

 当然のことながら、災害防止は大きな事故があって初めて気づくようでは遅い。犠牲者を出す前に未然に発生を予防する必要がある。「出勤した人が無事に家に帰る」「無事に家に帰らせる」。この当たり前のことが安全の目的であり、安全の原点である。

 そして、働く人皆んなを無事に帰らせるためには、個人差の出ないやり方としくみを構築する必要がある。まずは現場に存在する危険性または有害性を把握し、現場のリスクを除去・低減するためのしくみを構築し、全員で継続的に実施していくことである。

 いわゆるリスクアセスメントの実施になる訳であるが、各企業、各現場においては、働く人の安全と健康を最優先する企業の安全文化を確立するためにも、「災害ゼロから危険ゼロへ」と、より高い目標に向かって、リスクアセスメントの実施促進を合言葉に、トップ自らが率先してリスクアセスメントとコスモスを中心とした安全衛生活動に取り組んで頂くよう切にお願いする。


 【2013年度安全大会受賞者】

 〈事業場賞〉

 ○工事無災害賞(全工期無災害を継続し、3月31日までに竣工した工事を対象に選出)

 ▽㈱間組関東土木支店市原南事業所=圏央道市原南地区改良その6工事

 ▽五洋建設㈱東京土木支店=東脱水センター移転工事銑鋼脱水センター建家新築基礎他工事

 ▽東亜・栗原建設共同企業体=蘇我跨線橋橋梁耐震補強工事

 ▽鹿島建設㈱東京土木支店五井工事事務所=久保第一橋建設工事

 ▽鹿島建設㈱出光工事事務所=出光興産98期(116上期土木諸口)出光興産99期(116下期土木諸口)

 ▽㈱竹中工務店東関東支店=渋谷教育学園幕張中高増改築工事

 ▽㈱竹中工務店東関東支店=千葉みなとパークハウス弐番館大規模修繕

 ▽㈱竹中工務店東関東支店=放医研稲毛新研修棟新築工事

 ▽山内工業㈱=(仮称)加茂地区小中一貫教育校整備工事(建築)

 ○個人賞(5年以上にわたり建設業の安全運動に尽力し、その向上発展に功労があった個人を対象に選出)

 ▽長谷川 猛(五洋建設㈱東京土木支店)▽川野正人(鵜沢建設㈱)▽城所 穣(芝工業㈱)▽針谷紀夫(㈱昇和産業)▽井川英司(㈱昇和建設)▽寺坂幸夫(山内工業㈱)▽黒川靖彦(かしの木建設㈱)


 【謝辞】(東亜建設工業㈱・髙橋公志氏)

 私ども建設業に携わる者の一員として、災害ゼロを目標に無我夢中でやってきたが、まだまだ皆さんの期待に添えるまでには至っていない。この栄えある受賞は、千葉県分会員として、『なお一層労働災害防止に取り組むように』との激励の意味で頂くものと深く胸に刻み、本年度の全国安全週間のスローガン『高めよう 一人ひとりの安全意識 みんなの力でゼロ災害』を合言葉に、今後もますます安全管理活動に邁進する覚悟でいる。今後とも皆さんのご指導をお願いしたい。


 □大会宣言

 私たち会員一同は、すべての労働災害を撲滅するため、日々安全管理に取り組んでいる。

 しかしながら、千葉県下の建設業における災害発生件数は、前年度と比較して大幅に増加しており、非常に強い危機感を感じるとともに、労働災害撲滅へのさらなる取り組みを必要とする状況となっている。

 本大会を契機とし、会員事業所だけでなく、下請業者や一人親方まで、作業を行う一人ひとりに対して、このような現状を広く共有し、本年度の安全週間スローガンである『高めよう 一人ひとりの安全意識 みんなの力でゼロ災害』のもとに、リスクアセスメントの実施の推進、建設業労働安全衛生マネジメントシステムの導入・実施の推進、そして何よりも安全に対する思いを新たに、一人ひとりの意識を向上させていくことにより、誰もが健康に、安心して働くことができる快適な職場環境づくりに邁進することをここに誓う。


   2013年6月21日

     建設業労働災害防止協会

      千葉県支部千葉分会

       第42回安全大会

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