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千葉県市川市

新駅と民需調査委託/武蔵野線沿線開発で市川市/9月末までに報告書

2013/08/23 日刊建設タイムズ


 市川市は本年度、JR武蔵野線沿線まちづくり検討調査業務の一環として、鉄道検討をジェイアール東日本コンサルタンツ、民間需要動向調査をURリンケージにそれぞれ随意契約で委託して進めている。鉄道検討では、新駅予定地の地形等を考慮して駅舎の構造や前後の線路部の構造について基本的な検討を行うほか、民間需要動向調査では、想定するまちづくりモデル案について民間企業に対してヒアリングを行い、実現の可能性を探る。いずれも9月末までに調査報告書を取りまとめたうえで検証作業を行い、実現の可能性が高いということになれば、2014年度以降に駅及びまちづくりモデル案の概略設計等を進める予定。

 同市では昨年度、JR武蔵野線沿線まちづくり検討調査業務をURリンケージへ委託し、土地利用等の現状把握や新駅を利用する人の範囲、新駅設置の条件整理を行うとともに、地域開発の核となるまちづくりモデル案について、住宅系、商業・業務系、工業系などを組み合わせた複合開発案を数パターン検討している。こうした中で、実現の可能性を探るには民間企業の意向調査を行い、開発のトレンド等を把握する必要があるとして、本年度も引き続きURリンケージに委託して、民間需要動向調査を行うことにした。

 新駅は、市川大野駅と船橋法典駅の間に設置が検討されているもので、昨年度は鉄道高架橋の構造図を基にJRと協議し、駅舎部の縦断勾配など基本的な条件についてJRから指摘を受けている。これを踏まえて本年度は、駅舎及び前後の線路部の構造について基本的な検討を行い、JRと協議しながら工法の想定、概算工事費の算定等を行うことにしている。

 JR武蔵野線沿線地域は同市北東部に位置。市街化区域と市街化調整区域が入り組み、土地利用も住宅系と農地など自然系が混在している。こうした中で市街化調整区域内の農地では、農業従事者の高齢化や後継者不足により耕作放棄地が増え、資材置き場や駐車場への転用なども目立ってきており、周辺の住環境への影響も懸念されている。

 一方で、下水道の整備や治水対策が進められ、周辺には北消防署やリハビリセンター、福祉施設などの公共公益施設も立地。また、近い将来には幹線道路となる都市計画道路3・4・18号(浦安鎌ケ谷線)の完成も見込まれるなど、開発の可能性を含んだ地域となっている。

 市川大野駅と船橋法典駅間の新駅設置に関して同市では、10年度からJRへの要望を開始。しかし、両駅の駅間距離は約3㎞で、武蔵野線の平均的な駅間距離と同じで、新駅を設置した場合、各駅間距離は1・5㎞となり、新駅と市川大野駅、船橋法典駅の駅勢圏が重なる。このため、現在の乗降客が単に3駅に分散されるだけで利用者増には結びつかないとして、相当の理由がない限り、新駅の設置は難しいとの考えがJR側から示された。

 こうしたことから市は、沿線のまちづくりと一体となった新駅設置の可能性を探ることにした。その際、最も大きな課題となっているのが土地の集約化。種地となる公有地がなく、地権者も多いため、想定するまちづくりモデル案を実現するには、土地の集約化が必要となる。今後、まちづくりモデル案の実現段階で、地権者をはじめとする地元住民の理解を得ながら、その手法を検討する必要があるとしている。

 また、周辺では千葉ニュータウン事業に合わせて、東京10号線を本八幡から新鎌ケ谷まで延伸する県営鉄道(仮称)北千葉線の計画があったが、00年に当時の運輸省が公共事業の中止を決定したため、翌01年に県は第三セクター方式で事業を推進する方針を表明。東京10号線延伸線に名称を改め、地元の市川市、鎌ケ谷市と検討に入った。

 東京10号線延伸線の計画が実現すれば、ルートとしては市川市が検討している武蔵野線新駅が途中の乗換え駅になる可能性もあるが、千葉ニュータウンの計画人口が計画当初と比べて大幅に下方修正されたこともあり、現状のままでは需要の面から、東京10号線延伸線の実現はかなり難しい状況になっている。

 なお、市川市が本年度委託した調査の委託料(消費税を含む)は、鉄道検討が294万円。民間需要動向調査が99万5000円。


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