国土交通省の佐々木基(ささき・もとい)国土交通審議官は12日に建設専門紙記者会の就任インタビューに応じ、これからの人口減少・少子高齢化社会では各産業間で就労者の取りあいになり、その中で建設産業が残っていくためには、長年続いた重層下請構造を是正する必要があるとの見解を示した。企業が技能労働者を直接雇用して教育し、繁忙期・閑散期を問わず安定して働ける体制へと転換させる必要性を唱えている。社会保険未加入対策はそのきっかけとも述べた。
―就任(1月28日付)の抱負は
佐々木 政府の課題である復興の加速化、防災・減災、老朽化対策、経済の再生、これらに公共事業が寄与する役割は非常に大きい。短期的に言うと最大の課題の一つである施工確保に傾注し、円滑な執行に努めたい。長期的には、これからの時代における公共事業の役割を世の中にもっと知ってもらわなければならないと考えている。デフレで公共事業が減っていき、その過程においては、公共事業は世の中にとってそれほど必要ないという認識が、かなり意図的につくられていたところがあるのではないか。国土の安全、国際競争力の強化、人口減少下での新しいまちづくりと、何をとっても公共事業が単に経済を浮揚させるための手段ではなく、生み出されるもの自体に価値があるということを正当に理解してもらうことが、安定的な予算確保につながる。
―東京五輪・パラリンピック開催に向けた都市インフラの強化、社会資本整備のあり方について
佐々木 競技場や選手村などは別として、関連するインフラについては、2020年が目標というよりも、おのずからやるべきことをやっていくという過程の中で、2020年があるということだろう。ただバリアフリーのまちづくりは、世界に東京を紹介することになるので、急ピッチでやらなければいけないと思っている。前回の東京五輪の時はインフラが未整備だったが、今はある程度、成熟しているので、オリンピックがあるから猛烈な勢いで「この際だから」というのではなく、長期的な視野で計画的にやっていくべき。
―建設産業の人手不足への対応について
佐々木 不調不落が多いので、公共工事の執行能力自体がそもそもないと思われている節があるが、私たちの理解は違う。事業が止まるほど人がいないという状況ではない。需要と供給のバランスが崩れていて、このバランスを取り戻せば、現時点で十分可能だと考えている。一つには価格があわない。仕事が多くなっている時には、ある程度コストがかかるのはやむを得ない。必要なコストをきちんとみることが大事。ずっとデフレだったので、必要なコストをみるという感覚が残念ながら受発注者ともになかった。逆の局面になってきた時に、必要なコストをみなければ仕事はできないという認識を、特に発注者に持ってもらうことが大事。賃金、社会保険、教育機関の充実、外国人の活用の仕方などを組み合わせることによって、2020年までは持つだろう。ただそれ以降は相当の人が高齢化してこの世界から抜けていく。その時にどういう体制で仕事をしていくかというのは、大きな問題だ。
―社会保険未加入対策が重層下請構造に与える影響について
佐々木 社会保険の問題は建設産業活性化会議の大きなテーマにもなってくる。仕事の仕方、体制のあり方も変わっていかないといけない。その一環として職人は直接会社で抱え、生涯の生活を保証する、そのかわり頑張って働いてもらうという方向になっていくのではないか。建設業は繁忙期・閑散期が極端なので、重層下請でいつでも(職人らを)手放せる方が効率的という要請からできてきたものだが、これから人を抱えて安定的に仕事をしてもらおうと思うと、今までのやり方は理に合わなくなってくる。社会保険に加入し会社で抱え、教育して、きちんと仕事をしてもらう。(人口減少、少子高齢化で)これから産業間で人の取りあいになってくる。その時にこの産業が生き残っていくためには恐らく、体制のあり方から変わらざるを得ない。社会保険未加入対策は一つのきっかけになる。
―不調対策について
佐々木 病院や学校などでも不調が多いと言われており、国交省だけの話ではない。広く情報を集め、抽象的に発生率が何%というのではなく、もっと踏み込んで具体的にどこでどういう理由で不調が生じていて、克服するためには何が必要か詰めていきたい。関係者が多いので連携する仕組みが必要であり、そういう体制をつくっていきたい。
【写真=重層下請構造からの転換の必要性を説く佐々木基国土交通審議官】

















