県農林水産部担い手支援課は、農林総合研究センター(千葉市緑区大膳野町808)の機能強化に向けた組織再編や施設整備計画をまとめた「千葉県農林総合研究センター機能強化の基本計画」を公表した。施設整備計画では、本場内の10棟のうち、新耐震基準を満たす検査業務課と生物工学研究室を除いた8棟と、再編する育種研究所(長生村)及び果樹育種試験地(千葉市緑区辺田町)から機能移管する分を含めて本館に集約し、本場内を候補地として建て替える計画。
組織の再編では、県内にある13か所の研究施設を再編し、9の研究施設に集約。このうち老朽化が著しく耐震上の問題もある本場地区は施設を建て替える。本場は、本館を含む10棟の建物群で構成されているが、本館が建設後50年、その他の建物も多くが40年以上経過し、著しい耐震強度不足、狭あい化、老朽化、機器類の旧式化など研究環境が劣悪化。東日本大震災以降は、職員の安全を確保するため、すでに本館1階は使用を取りやめている。このため、同課は昨年度で基本構想を策定。同構想に基づき、組織の再編計画や施設整備計画を示した基本計画をまとめた。
施設を集約するにあたっては、本場内の10棟のうち肥飼料の法定検査や放射能検査を扱う検査業務課棟と遺伝子関連研究を行う生物工学研究棟は研究の性質上、検査の精度保持や異物混入防止の観点からも既存施設を使用することとし、建て替えの対象から除かれた。また育種研究所と果樹育種試験地は、研究部門を本場に統合し機能を強化する。
施設の候補地については、建て替えに伴う試験研究への影響が少なく、継続使用する2施設との近接度、接道などのインフラに係る諸条件を考慮し、本場内で建て替える方針とした。
施設の再編整備にあたっては、新技術などの開発に際して、組織の枠を越え、広く知識・技術の結集を図るため、従来型に代わる「オープンイノベーション・プラットホーム型」の考え方を取り入れ、地域の技術的課題に先進農家等と共同で解決に取り組むオープンラボの新設や供用実験室の設置、執務室のワンフロア化、展示スペースの設置などを進める。また施設規模については、執務室、実験室、研修室・会議室、図書資料室、電算資材室など必要面積を算定し、検討する予定で、施設のバリアフリー化も考慮する。現行施設の延べ床面積は長生村の育種研究棟と千葉市緑区辺田町の果樹育種試験地事務所を含め8310・38㎡で、このうち再編統合分の延べ床面積は6994・38㎡。
同課が昨年度でまとめた「千葉県農林総合研究センター機能強化の基本構想」では、①規模拡大と高付加価値化に向けた研究を推進②千葉ブランドとなる新品種を迅速に育成・普及③環境変化に対応し、生産を下支えする研究を強化④効率的、効果的な研究体制の構築――の4つの具体的な取り組みの方向を示し、県農林業の高収益化、高付加価値化に向けた先導的施設として、研究体制や施設の再編整備を進めることとした。この基本構想に基づき基本計画を策定し、より具体的な再編の方向性を示した。
同センターは、1908年(明治41年)に市川市中山に農地試験場として開設され、63年に現在の千葉市緑区大膳野町に移転。その後、森林研究センター等と統合し、08年に農林総合研究センターに改組した。本場を核に県内13か所の研究所・研究室で構成され、県農林業の試験研究機関として、新品種の育成や栽培技術の開発など全国屈指の農業県を支えている。
同センターの現行施設の状況は次の通り。(①規模②建築年③耐震診断)
▽本場本館=①RC造3階建て延べ2394・07㎡②63年③最低Is値0・26▽第2分館=①RC造2階建て延べ661・50㎡②70年③未実施▽農本館(展示会館)=①RC造2階建て延べ660㎡②70年③最低Is値0・53▽病害虫防除所事務所=①延べ331・20㎡②63年③未実施▽病害虫防除所実験棟=①延べ358・92㎡②63年③未実施▽検査業務課棟=①延べ798・00㎡②85年③新耐震基準▽生物工学研究室=①延べ518・00㎡②87年③新耐震基準▽旧環境機能研究室棟=①延べ603・40㎡②67年③最低Is値0・34▽旧微生物研究室棟=①延べ544・76㎡②63年③最低Is値0・79▽流通利用実験室=①延べ117・40㎡②63年③未実施▽育種研究所本館(長生村)=①延べ992・63㎡②83年③新耐震基準▽果樹育種試験地事務所=①330・50㎡②66年③未実施