建設経済研究所は21日に「日本経済と公共投資」と題したレポートを公表した。毎年2回、春と秋にまとめているもので、今回は景気回復と建設投資の課題について分析している。
レポートでは「今後10年間でインフラ整備などに集中投資し、公共投資による需要創出でデフレ脱却を図る」という国土強靭化について、「早くも批判的な意見も聞こえてきている」ことなどから、建設投資の経済効果について記載した。
各種統計から分析した上で、まとめでは公共投資は本来、「ストック効果を目的として行われるべきもの」で、すぐに効果が発現する事業を優先することにも一理あるが、「たとえ用地取得や工事に長期間を要する事業であっても、ストック効果の大きい事業を戦略的に実施していくべき」としている。
公共事業を批判する際にまず挙げられるのは、財政赤字が一段と拡大し、財政健全化に悪影響が及ぶというもの。これに対してレポートでは「負債の性格を考える必要がある」と指摘。
建設国債残高は最近10年間でほぼ横ばいでコントロール下にあることを示し、「我が国財政の真の問題は、拡大する一方の赤字国債、つまり医療・年金・福祉関係予算にあることが推察される」と記述している。
地方に対するバラマキ批判も取り上げた。公共投資の大都市圏と地方圏の推移をみると、1970年代後半以降は、概ね4対6で推移。90年代に地方圏に対してバラマキ的に投資の比重を高めた様子は見られないことを明らかにしている。地方経済を下支えする一方、大都市圏も恩恵を受けていたと記述した。
ストック効果については「社会資本が機能することにより継続的に得られる効果」と定義。一例として圏央道沿線の工場や物流施設の立地促進効果を取り上げている。