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国交省幹部に聞く 毛利信二土地・建設産業局長

2014/06/16 本社配信

 今国会で建設業法、入契法、品確法が一体的に改正された。日本工業経済新聞社では、建設業行政を所管する国土交通省土地・建設産業局の毛利信二(もうり・しんじ)局長にインタビューし、円滑な施行に向けた今後の取り組みを聞いた。毛利局長は改正建設業法で規定された担い手の育成・確保に取り組んでいる企業へのインセンティヴ付与を検討していく考えを明らかにした。改正品確法の運用指針については、策定プロセスの一環として自身が地方に出向き、首長らと意見交換を行い、改正法の趣旨を浸透させていく姿勢を示した。また今夏に建設業の技術者制度全般を議題とした検討会を立ち上げることも明らかにした。







 ―改正入契法でダンピング防止を明確化した意義について。また、改正品確法とあいまった今後の公共調達について


 毛利 今回の入契法、品確法の改正でダンピングの防止が規定された。もともとダンピングについて私は、企業あるいは建設産業全体が健全に発展していくことを阻害する自虐的行為だと考えている。下請企業へのしわ寄せや、労働者の賃金などの雇用環境の悪化を招くので、その防止は大きなテーマ。今回の入契法の改正で、ダンピングを初めて「その請負代金の額によっては適正な施工が通常見込まれない契約」と定義した。そして、それが防止されていくことが、入札契約の適正化の基本事項になった。これは、ダンピング防止を政策の根幹に据えたことになる。具体的施策として、建設業者に対して入札金額の内訳書の提出を求めるが、これによってまず、見積もり能力のないような業者を排除する。更に、地方公共団体にダンピング防止の取り組み強化を促していく。その手段の一つが改正入契法に基づく適正化指針の改正であり、かつ、法に基づく要請も地方公共団体に対してしっかりとやっていく。また改正品確法では三点明確化されたことがある。一つは、予定価格の適正な設定や実効性あるダンピング対策。二つ目として、公共工事の現在および将来の品質確保とその担い手を育成、確保していくこと。そして三点目として、事業の特性などに応じて多様な入札契約方式を選択できることである。この趣旨の浸透も図っていかなければならない。このため、今月末から始まるブロック監理課長会議の場で、各公共団体に改正三法(建設業法、入契法、品確法)の趣旨の徹底をお願いする。また私自身も、改正品確法の運用指針の策定プロセスの一環として、地方公共団体の方々に対して趣旨の伝達を図り、意見交換を通じて浸透を図っていきたいと考えている。同時に、一部の発注者に残っている安ければ良いという発想の転換を促していければ、と思っている。局長というポストであれば首長さんにも会いやすい面もあるだろう。(策定スケジュールについては)こうしたプロセスを経ながら秋ごろから原案のとりまとめ作業に入り、秋が深まるころ、できるだけ早く骨格をお示しできるようにしたい。(議員立法であることも踏まえて)スケジュールを含めて、自民党公共工事契約適正化委員会の先生方を始め与党関係議員にもよく相談して進めていきたい。


 ―入札金額内訳書の提出義務化の進め方について


 毛利 現状でもすでに直轄、都道府県、政令市はほぼ100%何らかの形で内訳書の提出を求めている。市町村も4分の3は何らかの取り組みを行っており、今回の提出義務付けはそれほど新たな負担にはならないとは考えている。様式についてもそれぞれの発注者が受注者の負担も考慮して、工事の規模・内容に応じて必要な範囲の内訳書の提出を求めるように運用する。小額の公共工事についてまで詳しい内訳書の提出が必要ということではないので、内訳書の提出を現在求めていない市町村にもよくわかるように、内訳書のひな型を示すことを検討している。秋ごろには公表したい。


 ―施工体制台帳も金額に関わらず作成が義務付けられるが、進め方は


 毛利 既に全建統一様式などが普及している。今回の法改正で作成の裾野が広がるので、より分かりやすくするために、国交省のホームページに作成例、記載事項を明示する。


 ―改正建設業法の4日施行分の中で、担い手の育成・確保が規定された。団体、企業、国交省それぞれの役割は


 毛利 今回、建設業法の65年の歴史の中で始めて、「担い手」という言葉が入った。例えば農業や医療では法令用語として既にあったが。一方、改正品確法で規定された「担い手」の方は、もう少し意味が広い。公共工事の現在および将来の品質確保の「担い手」とされている。すなわち、技能労働者や技術者だけではなく、地域の建設企業そのものにも「担い手」という意味がある。この部分にも思いを致しながら、今後の担い手の育成・確保に取り組まなければならないと考えている。そのために、まず個々の事業者の取り組みが求められる。例えば技能労働者の処遇改善や技術力を向上する取り組みをしていただかなければならない。国交省としても、賃金支払いの実態調査をきめ細かくやっていく。これまであまりやっていなかったが、定点調査として実際にいくら払われているのか、それほど多くはできないが、各ブロックで調べていく。調べることで、適切な賃金支払いを促すことになればとも思っている。また、個々の企業の取り組みだけでは限界があるので、団体の取り組みが重要になってくる。例えば独自の資格制度を設けている団体がある。そういう取り組みはどんどん進めていただきたい。そのための国の支援として、モデル的な資格、研修制度を国が広く周知していく、国も認めている制度だということを国交省のホームページなどで紹介していく。またもっと広くこうした取り組みがつながっていけるようにするためには、団体間の調整が必要になることもあるだろう。その調整に国が出ていっても良い。そして究極的には、国の法令の制度として高めていくという支援もある。


 ―担い手確保の取り組みを適切にしている事業者に対してのインセンティヴとして、経審や総合評価方式で加点していく可能性は


 毛利 例えば若手の技術者、技能労働者の確保に向けた取り組みを経審上で評価する取り組みは、十分に考えられる。また総合評価に限らず、個別工事において若手技術者の配置を促していくことも考えられる。これは建設産業活性化会議のアウトプット(中間とりまとめ)として検討している。担い手を育成・確保している企業を発注者がしっかりと認識する環境整備には取り組んでいきたい。


 ―業種区分への解体工事業追加について


 毛利 43年ぶりに業種追加をした。今回追加されなかった業種についても、様々な意見があった。まだ熟度が十分でなかったことによって業種追加に至らなかったものもあると認識している。今後、熟度を高める自助努力をしていただくことを期待している。解体工事業の追加については、長年の民間団体の熱心な取り組みが強力に牽引したことは間違いない。どう施行していくかについては、まず2年程度の十分な周知期間を設け、許可の準備をしていただく。2年経って施行されても、さらに3年間は経過措置として、従前のとび・土木工事業の許可で解体工事業をできるという取り扱いにする。その間に解体工事業の許可を取りにいくのかどうか、選択していただく。またもう一つ大事なこととして、この夏に技術者の検討会を立ち上げようと思っている。その中で解体工事の適正な施工を確保する技術者の資格も検討する。できるだけ早く方向性を明らかにし、円滑に解体工事業の許可制度を運用していく。


 ―立ち上げる技術者の検討会の検討内容とは


 毛利 例えば若手技術者の技術力を伸ばしていく、一層活用していただくためにはどうすれば良いのか。試験制度の受験資格や、技術者の効率的配置など、いくつかのテーマを設け、課題に応じて検討していく。建設業の技術者制度全般にわたる基本的な検討を行うつもりである。



【写真=品確法運用指針の策定プロセスについて話す毛利信二土地・建設産業局長】

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