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建設業労働災害防止協会千葉県支部

「世界トップ水準」お墨付き/ILOでみた日本の建設安全/小澤真一・千葉労働局長

2014/08/25 日刊建設タイムズ


 建設業労働災害防止協会千葉県支部の正副支部長ら三役一行はこのほど、7月11日付で就任した小澤真一・千葉労働局長を表敬訪問した。小澤局長は厚生労働省職業能力開発局海外協力課長などを歴任し、直近の3年間は国際労働機関(ILO)の一員としてタイのバンコクに赴任。その経験から「安全基準ひとつにしても極端な較差があり、日本はあらゆる面で水準が高いことを痛感した。特に安全対策への取り組みは、世界的にみてもトップクラス」と述べる。一方で、県内建設業死亡災害の現状については、建災防非会員による「アウトサイダーの問題が大きい」と指摘し「(アウトサイダーを)少なくしていくという意味での建災防への関与は、どこまで力が及ぶかは分からないが、出来る場所にお願いしていく」との協力を約束した。


■建災防幹部が表敬訪問

 この日の表敬訪問には、尾頭博行支部長をはじめ内山弘通、柴田一敏、白川浩各副支部長と神田公司専務理事が同行。千葉労働局では小澤局長をはじめ、倉持清子・労働基準部長と但馬明雄・同健康安全課長が応対した。

 あいさつに引き続き行われた会談で小澤局長は「雇用環境や条件を整えてもらう目的」で、昨年12月に山本前労働局長や倉持労働基準部長らが出向いて開いた(一社)千葉県建設業協会幹部との意見交換会について「約15年ほど前の人手不足時には、オペレータ採用などで女性の活用を試みた時期があり、その後きちんと公共投資が続いていれば、女性の定着もあったかもしれない」と言及。

 これに対して内山副支部長は「現在、国交省では女性の技術者を対象とする入札方式を始めた」と述べたうえで「作業員の労務単価の上昇に加え資材の値上がりに追いつかず、現場と合わない設計積算により今は不調不落入札が多い」と指摘。例として「1億円の仕事でも積算して入札に臨んだ結果1億1000万円かかるとなると中々厳しい」と述べ、「結局その費用は、安全面が疎かになることで相殺されてしまう」との現状を訴えた。


■発注者に対する安全管理意識を

 一方で内山副支部長は「それらに対して労働局では、各労働基準監督署を通じて発注者への安全関係教育をされている」と評価。「人の命に関わる現場の工事にそぐわない設計については、国や県はもとより、市町村への指導の徹底をお願いしたい」と要望した。

 さらに尾頭支部長は、工事の設計変更について「本体工事の設計内容は協議をしながら見てもらえるが、任意仮設の部分は中々見てもらえない」との安全面での現状を指摘。これに対して小澤局長は「(第2の意見としての)セカンドオピニオンをみなさんに持ってもらい、変な設計をするところであれば『次は使わない』と声を上げれば良いと思う。我々は事例を持っている訳ではないが、現場にそぐわない設計の工事は無理して受けずに、設計の『どの部分が実情に合わない』という話を積み重ねていくことも必要なのでは」とアドバイスした。


■アウトサイダー対策が喫緊の要事に

 県内の建災防の会員は現在約2200社で、公共工事を主体とする(一社)千葉県建設業協会の会員のほとんどが加入。また、他県も同様に、建災防に加入していない事業者の事故が非常に多いことを説明した内山副支部長は「例えば、国を挙げて『県知事の許可を受けるには必ず建災防に加入すること』という指導を行えば、労働災害の減少に繋がるのでは」と提案。加えて尾頭支部長は「我々も加入に向けた声掛けなど、未加入事業者に対する出来るだけの努力をしていく」との姿勢を示した。

 さらに「国県市町村を含めて、建災防の意味をよく理解していない発注者が多いことも気になる」と指摘した内山副支部長は「是非とも、労働局から官庁の発注者へのPRをお願いしたい」と要望。これに対して小澤局長は「発注者への研修があれば、参加した限られた人には当然、伝わるようにしている。我々が出来ることは、建災防が行っている活動を出来るだけ発注者サイドに知らしめて行く努力をすることだと思う」との見解を示した。

 これらを踏まえて倉持労働部長は、現状として「県の発注機関と労働局との会議に建災防にオブザーバーで入って頂き、業界のみなさんの意見をその場に反映させるという取り組みが始まっている。既に県内でも監督署単位で協力頂いているところもある」と紹介。小澤局長は「建設業は設備工事などを含めて範囲が広いことから、建災防のみなさんには総力を挙げて取り組んで頂きたい」と要請するとともに「安全になれば建設業に対する若い人たちの見方も変わってくるだろう」との期待感を示し、約1時間にわたる会談を終えた。

 【プロフィール】

 小澤真一(おざわ しんいち)1979年4月に労働省入省。労働基準局安全衛生部安全課中央産業安全専門官(90年4月)、同化学物質調査課有害性調査機関査察官(92年10月)、労働福祉事業団総務部海外医療業務室長(96年4月)、中央労働災害防止協会国際安定衛生センター副所長(2000年8月)、中央職業能力開発協会技能振興部長(04年5月)、厚生労働省職業能力開発局海外協力課長(09年7月)などを歴任。前述の通り、直近の3年間は国際労働機関(ILO)の一員としてタイのバンコクに赴任。出身校の東北大学工学部では土木(専門は土質)を専攻。1956年8月9日生まれの58歳。新潟県出身。


小澤千葉労働局長表敬訪問①_R002599.jpg 小澤千葉労働局長表敬訪問②_R002600.jpg

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