リニア中央新幹線の建設に向けて事業主体の東海旅客鉄道㈱(JR東海)は29日、補正後(最終)の環境影響評価書を公告した。山梨県関係では、トンネル工事による発生土の活用について記載。早川・芦安連絡道路(約160万立方m)やリニア駅周辺基盤整備(約45万立方m)を有効利用先とし、富士川町高下地区の造成工事(約240万立方m)と合わせて記載。これらにより、トンネル工事発生土全体の約7割以上の活用が可能とした。また、リニアの眺望イメージなども記載した。
最終環境影響評価書によると、トンネル工事による発生土は、リニア建設事業内で再利用を図るほか公共事業などに活用する。
現時点での活用先として、富士川町高下地区に計画する変電施設および保守基地での再利用(造成工事、約240万立方m)、早川町塩島地区付近に計画する発生土置き場(約4万1000立方m)、県が計画している早川・芦安連絡道路(約160万立方m)などを考えている。早川・芦安連絡道路への活用では、想定する工事用車両の通行ルートも示し、車両運行に係る具体的な調査および影響検討項目も記載した。
そのほか、列車走行に係る騒音・振動について、県の要請を踏まえて予測値を追加して記載。
工事期間が10数年にわたる南アルプス地区(早川町)における工事期間中の景観や自然との触れ合いの活動の場への評価については、これまでの鉄道施設の存在による影響評価に加え、工事による影響評価も実施。
景観については、主要な眺望点である「青崖トンネル出入口(北側)」で工事用車両を視認することになるが、交通量の削減などで景観の変化に及ぼす影響は小さいと予測。「人触れ」については、「新倉湧水」などで車両台数の調整などを行うことで利用性や快適性の変化は小さいと予測した。
さらに、早川町内で実施した水平ボーリング調査について、調査結果の詳細な内容を記載した。
鉄道施設(駅)の供用に係る廃棄物については、副産物・廃棄物の分別・再資源化などで低減すると予測。
地上区間における景観への配慮では、集落や病院などが路線の近くにある場所は音源対策として防音防災フードの設置を基本とする。一方で、河川部や農地、工業専用地域などはリニア車両が一定区間見えるように防音壁とする。
地上区間の大部分を占める高架橋や橋梁の景観については、有識者による景観検討会を設置し構造形式などを検討しており、景観の創出と地域景観との調和を図るとともに、車両からの眺望にも配慮し騒音対策との両立を図っていくとした。
評価書には着工までの流れも記載しており、工事実施計画の認可を受けた後、地域ごとに事業説明会を開催し、その後、中心線測量や設計協議、用地説明、用地測量、用地取得を進める。施工者を決定後には工事説明会を開催し、施工方法や安全対策、工事用車両の種類や通行ルートなどを説明して工事に着手する。
【表=トンネル工事による建設発生土の発生場所ごとの活用先】