2017年度に企業の加入率100%を目標として進めている社会保険未加入対策。この8月には国土交通省直轄工事のおいて元請と1次下請から未加入企業を排除する取り組みもスタートした。順調に対策が進んでいるように見える保険未加入対策だが、日本型枠工事業協会の三野輪賢二会長は、「まだ課題が多く残っている」と指摘する。保険未加入対策の現状での問題点について三野輪氏の考えを聞いた。
三野輪会長は、社会保険未加入対策を進めることについては、「もちろん賛成。保険に加入して、若者に入ってもらって、残ってもらうという考え方は正しい」としながら、「法定福利費はいまだきちんと支払われていないのが実情だ」と指摘する。
「国土交通省の直轄工事では法定福利費を確保しているとしているが、我々協会員の多くは直轄工事は年に1回程度しか請け負う機会がない」。さらに、「県や市など公共団体の9割以上はきちんと確保されていない印象だ」と指摘する。
さらに、「工事の6割以上は民間工事。不動産業団体から建設価格が高騰し、これ以上高くなれば商売として成り立たないという発言もある。こうした中で法定福利費を払え払えという企業が仕事を請け負うことができるのか」と話し、現状では、下請企業は法定福利費の確保が難しく、結局利益を削るなどしないと保険に入れない実態があると言う。
「一度保険に加入すれば払い続けなければならない。まず保険に入って、払った分を要求していこうという発想も分かるが、できる企業とできない企業がある」。
「型枠の場合、単価の15%前後の法定福利費が必要になる。長期に及ぶ施工単価の低減、とりわけリーマンショックによる単価の暴落の結果、すでに専門工事業者は疲弊している。負債を多く抱えている事業主も多い。施工単価は少し上がったが、まだ技能者の給与水準や経営体力の回復面で満足できる状態ではない。『社会保険にまず入れ』は実際問題として難しい」と指摘する。
一方で、建設業許可の更新時における保険加入チェック、さらには指導の取り組みは始まっている。三野輪氏は、「指導を始めるタイミングが早すぎる。法定福利費が下請に支払われるようになるのと、加入指導が両輪で同じスピードで進まなければ。これでは、今まで以上に技能者が減る危険性がある。保険加入を回避するため一人親方が増えているという話もある。それは本来の主旨と違う」と懸念する。
こうした状況に、「細かな議論がつめられていない」と話し、具体的な解決策として「法定福利費の支払いを制度化できないか。消費税と同じように、発注者と元請、元請と下請の間も工事費に応じて、機械的に所定の法定福利費を乗せるような形を制度化すれば、誰もが納得できる」と話し、保険加入対策を実現するためには、依然課題は多く、さらに具体的な議論が必要だと強調する。