県は、建設が進む大強度陽子加速器(J-PARC)の産業利用促進策として整備を計画している中性子ビーム実験装置(材料構造解析装置、生命物質構造解析装置)について、実験装置の提案書をJ-PARCプロジェクトチームに対して先月30日に提出した。2つの装置の概算整備費は18億円。
今後、来年1月上旬に審査結果を得て、それを基に3月下旬にも基本設計や建設計画などを盛り込んだ詳細計画書を提出。来年度には詳細設計を進めて機器製作を発注する見込み。スケジュールでは、機器製作および据付を平成19年度までに行い、J-PARCが稼働する20年4月の供用開始が目標。
これらの装置は、東海・ひたちなか・日立地区にJ-PARCを核とした科学技術拠点を形成するサイエンスフロンティア21構想の一環。同構想では、J-PARC計画の産業利用・波及支援機能として「中性子」の利用促進をうたっており、同計画の物質・生命科学実験施設内に設置することになった。
この実験施設には合計で23本のビームラインの設置が可能であり、公募によって整備するラインを選定するため、県でも2本のビーム実験装置を設置することを計画し、提案書を提出した。
材料構造解析装置は、セラミックスや金属、半導体などの物質材料科学全般について研究するもので、この装置を使って新規の高付加価値材料の創成を目指す。応用例としては、高性能燃料電池の開発、高密度磁気メモリの開発、高温超伝導材料の開発などを見込む。
生命物質構造解析装置は、タンパク質などの生体高分子の構造解析を行うもの。応用例として、新しい医薬品の開発、冷凍保存技術の開発などを予定している。
概算整備費は、それぞれの装置で9億円前後を見込んでいる。
県では、2装置の提案書を、日本原子力研究所と高エネルギー加速器研究機構で組織しているJ-PARCプロジェクトチームに提出。
提出した内容は第一次審査にかけられ、来年1月上旬に審査結果を得る予定。引き続き、詳細計画書(装置の基本設計、建設設計、利用計画など)を来年3月下旬にも提出する予定。
来年度は、詳細設計を進めて、機器製作を発注する。発注内容や方法などは今後、詰めていく。機器の製作・据付は19年度まで進め、J-PARCが稼働する20年4月の供用開始を目指す。
なお県では、SF21構想で中性子ビーム実験装置の他に、産学官共同研究施設(5000㎡規模)の整備も計画しており、検討を進めている。