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(一財)建設業振興基金

新分野進出ライブラリ106/山で利益が出る体質へ

2005/02/01 日本工業経済新聞(茨城版)

 ■新分野・新市場への取組又は先進的な取組等(以下「当該取組」という。)のテーマ

◇樹木廃棄物を焼却せずに再資源化するウッドチップリサイクルシステムの開発

 ■取組の内容

◇昭和58年に発足した「中部森林開発研究会」を通じた研究により、建設工事や山林の維持管理事業に伴って発生する樹木廃棄物など、それまではほとんど焼却処分していた不用材を100%利用して資源に変身させて、やがては自然に還すシステムを開発。

 「ゼロ・エミッション」を追求した無公害の画期的なシステムで、具体的には次のとおり。

 <1>根株、枝葉をウッドチップ化する破砕作業及び選別・異物除去作業。

 <2>木の端材によるベンチ、遊具・東屋への利用。

 <3>竹そだ・竹チップから作ったフィルターで工事排水をろ過して、河川の水質汚濁の防止。

 <4>ウッドチップと樹脂による舗装。弾力性が有り、透水性が高いので水はけが良い。

 <5>麻袋の中にウッドチップを詰めた「エコ法枠工法」による傾斜地の地盤保護。

 <6>バーク(樹皮)堆肥の製造。

 <7>バーク堆肥による土壌改良及び法面緑化。通気浸水保水性を高め、植物の育成促進が大。

 <8>パーク堆肥による有機栽培(野菜・果実)への取り組み。

 <9>学校ビオトープの展開。共に考える勉強会・ウッドチップ利用ビオトープの施工・管理。

 <10>下山バークパークにおいて上記のシステムを展開。

 ■アイデア発案の契機

◇山林事業は、植林、樹木、下草の管理、伐採材の売却のサイクルが滞りなく回転することによって成り立ってきた。しかし近年では、木材の価格問題や搬出問題等からこのサイクルが止まってしまい、山の荒廃が進んで林業の後継者も育たない現状から、山では利益が出ない体質になっている。

 また、剪定・下草狩り・伐採時に発生する樹木廃棄物を焼却処分する事により、ダイオキシンが発生して大気汚染や自然破壊を引き起こすなど、山で働く人々は問題を抱えながら仕事をしていた。

 自然の破壊が人間性の破壊につながることを感じ、何をすればよいのかを考え、民間の活力を出すために、山林から出る樹木廃棄物を100%資源として利用したシステムとして構築した。

 ■社長の役割と社内の実行体制

◇自分だけで行うのではなく、皆で行う地域に根ざした活動として進めており、出来るだけ情報を入れ、悩みを聞いて相談に乗っている。

 ■従業員教育、新規の人材確保等の方法

◇ISO14000を通じた環境への目標を持たせる事による社員のコダワリができた。教育は、各部署で行っている他、外部研修・海外研修も随時行っている。

 これらの環境林業・環境を配慮した土木事業展開への取り組みが評価され、大学院卒の新入社員の入社が増加している。

 ■事業化までに至る間で苦心したこと、及び成功の要因

◇事業展開はどうあるべきかを考え、自分の仕事としてとらえていたので、苦労とはいえない問題だった。幸いに、金融機関にも業務の先進性に対して投資をしてもらえ、周りの友人にも支えられた。

 その感謝の気持ちを忘れずに、良いお節介が出来るようにしたいし、志を同じくする人々との連携を強めていきたい。

 ■相談・助言、情報収集等の相手先

◇「中部森林開発研究会」「三つの青の会(青い空・青い森林・青い水を考えるリサイクル事業の全国組織」「ウッドチップリサイクル工業会(同社が事務局)」を通じた同業種・異業種との交流を通じ、自分自身がその企業や現場に足を運び、その物を見たり、聞いたり、試したりしている。

 それらの実践の場である「下山バークパーク」は大手ゼネコン、大手建設機械メーカー、リサイクルセンター、緑化事業者、総合広告企業、地元金融機関、設備企業などの協賛で運営している。

 ■主たる顧客等

◇国、地方自治体、民間企業、農業者の全国レベル。

 ■差別化等のポイント

◇時代に対応した事業への取り組み。足元(地元)にある森林を通じた環境活動を行うことによって、現場で働く「親方」の仕事が楽しくなるようにしたい。

 ■投資額及び必要資金の調達法

◇金融機関から。あまり背伸びしない範囲の活動を考えている。

 ■事業のスタートから現在までの売上及び利益の推移

◇初期と比較して売上、利益とも2倍程度になった。

 ■大きな成果と思われるもの

◇志を同じくする仲間が集まり、情報量が多くなった。

 ■今後の課題と解決方針

◇食の時代に対応したお米、野菜の連作を目標とした有機低農薬農業に取り組むため、農協、生協と連携を進めている。



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