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建設業労働災害防止協会千葉県支部

「全国安全週間」始まる/年間最少記録に挑戦/建災防千葉県支部

2017/07/03 日刊建設タイムズ

 ――組織で進める安全管理 みんなで取り組む安全活動 未来へつなげよう安全文化――をスローガンとする「第90回全国安全週間」が1日、全国各地で一斉に始まった。県内の建設業において2011年に過去最少の11人を記録後、3年連続で増加していた死亡災害。一昨年から2年連続で減少に転じ、昨年は12人と最少記録まで、あと一歩のところまで迫った。県内建設業での本年の労災死亡者は、5月末現在で昨年と同じ5人。建設業における死亡災害の増加が強く懸念される一方で、本年も「年間最少記録」に加えて、念願の「年間一桁」の実現に向けて県内建設業界が一丸となり、ゴールめがけて驀進する。


 ◆節目の90回で実現へ


 第90回目の「全国安全週間」を迎えて、建設業労働災害防止協会千葉県支部の尾頭博行支部長は、支部としての労働災害の「現状認識」と「今後の取り組み」について言及した。

 第12次労働災害防止計画による建設業における死亡災害の減少目標は2割以上(県内の目標値は11人)とされることには「減少傾向を維持して、目標達成を目指したい」とした。


 ◆安全対策の充実と非会員事業場解消


 しかし、震災の復興工事の本格化や東京五輪の開催による工事量の増加並びに資材・人員の不足など、災害の発生要因が増す中で、死亡災害等の重篤な労働災害の増加を懸念。「我々としては従来にも増して、緊張感を持った労働災害防止への取り組みが求められている」と訴えた。

 これまで長年にわたる重篤な労働災害の撲滅、特に、死亡災害の撲滅を目指して活動を続けきた同支部では、ここ3年間の千葉県内建設業における死亡災害の特徴についてまとめ、尾頭支部長が説明。

 第1点は、墜落転落災害をはじめとする「三大災害関係及び交通労働災害の多発」。過去3年の総数51件のうち、19件(37.3%)が墜落・転落災害で占められ、10件(19・6%)が交通事故、建設機械等によるものが8件(15・7%)と続く。また、在来型災害の典型例とされるスレートの踏み抜きが3件、熱中症が2件発生し、これまでにない例としては、チェーンソーを用いた作業での死亡災害が2015年に4件、本年も既に2件発生。これらについて尾頭支部長は「『崩壊・倒壊災害』はゼロだったが、数字の上でも三大災害と交通労働災害対策の重要性が裏付けられている」と指摘した。

 第2点として「死亡災害に占める非会員事業場の割合が依然として高率なこと」。同じくここ3年間51人のうち、36人(70・6%)が、元請・下請を含めて非会員事業場で占められることについては「非会員事業場の安全衛生水準が一概に低いと断定はできないが」と前置きしたうえで「今後、県内建設業での重篤な労働災害防止を推進するには、非会員事業場の解消が急務である」と強調した。

 第3点としては「改修工事・更新工事・解体工事」における死亡災害が、同じくここ3年間に14件(27・5%)と発生していること。改修等工事は、施工に係る制約が多く、技術的にも難易度が高いことから「施工計画作成時におけるリスクアセスメントの充実を図る必要がある」と指摘。また、建設業以外では定常時の災害が大きく減少し、非定常時での災害が多発しているとされることには「元々建設業では非定常作業の比重が高く、とりわけ改修等工事は、非定常作業の比重が高い傾向にある」と分析。

 総じて「これら3点の傾向を踏まえ、安全対策の充実を図る必要がある」とした尾頭支部長は、「全国安全週間中に労働災害防止計画に示された実施事項とともに、県内建設業における死亡災害の特徴を再確認し、それぞれの立場で責任を持って取り組むことにより、実りある安全週間にしたい」との決意をにじませた。

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