県企画部は、東海村に建設中の大強度陽子加速器(J-PARC)を中心とした科学技術拠点を形成する「サイエンスフロンティア21構想」で、今年度は<1>2本の中性子ビーム実験装置(材料構造解析装置、生命物質構造解析装置、整備費18億円)の建設<2>放射線を利用した産官学共同研究施設の建設に向けた規模や機能の検討<3>中性子利用促進研究会の運営-などを進めている。そのうち、材料構造解析装置は、初の機器製作となるガイド管および台座を先月に発注。その他の遮蔽体や解析装置(検出器、試料槽)などは日本原子力研究所に委託している詳細設計をまとめ、来年度に発注する。生命物質構造解析装置も来年度に発注・整備する予定だ。
一方、産官学共同研究施設(想定規模約600㎡)は国に建設を要望していく。各施設は平成20年度のJ-PARC供用開始に合わせた整備を見込む。これら県の事業の今年度予算は約7億4000万円。
中性子ビーム実験装置は、J-PARCの産業利用などのため計画され、物質・生命科学実験施設内に設置される。
実験施設には合計23本のビームラインが設置可能で、県でも2本のビーム実験装置の設置を計画。原研と高エネルギー加速器研究機構で組織するJ-PARCプロジェクトチームから設置が承認されたため、基本設計を策定。詳細設計は原研に委託している。
県が整備するビームラインのうち、材料構造解析装置は、セラミックスや金属、半導体などの物質材料科学について研究するもので、高性能燃料電池や高密度磁気メモリ、高温超伝導材料の開発などを見込む。概算整備費は約7億7000万円。
生命物質構造解析装置は、タンパク質などの生体高分子の構造解析を行うもので、新医薬品の開発、冷凍保存技術の開発などが期待されている。概算整備費は約9億1000万円。
県では、具体的な整備に今年度から取り組んでおり、まず、材料構造解析装置を先行整備。初の機器製作となるガイド管および台座を先月に発注した。発注にあたっては国際入札を行い、スイスの企業の日本代理店である(株)アバンセ(東京都)が落札した。
その他の遮蔽体や解析装置(検出器、試料槽)などは詳細設計を詰めており、来年度に発注の予定だ。発注は可能な限り分割して行いたい意向。
また、生命物質構造解析装置(導管、遮蔽体、検出器など)も来年度に発注・整備する予定だ。
これらの製作・据付は19年度まで進め、20年度に予定されるJ-PARCの稼働に合わせた供用開始を目指す。
一方、産学官共同研究施設は、J-PARCを補完する研究開発や研究成果の産業化などを担う中核的な拠点として整備を構想。
県や有識者などで組織する「整備検討委員会」が昨年にまとめた報告書では、施設は5000㎡規模と仮定し、実験ゾーンや研究ゾーン、管理ゾーンなどで構成。概算建築費30億2000万円と試算した。
報告書に基づき県では検討を重ね、国に対して建設を要望することになり、施設内容も当面は運営に最低限必要なものに限定し、J-PARCの供用開始に合わせた建設整備を推進していくことにした。
想定している規模は延べ約600㎡で、内部は事務室や相談室などを仮定。建設場所は未定だが、J-PARCの施設内か近隣地域を見込む。
今後も、国に対して建設推進を要望していく。
また、関連施設として、原研・高エネ研が中心となってJ-PARCの利用・研究に関する技術指導やサービスなどを提供する「(仮)産業利用促進センター」についても、建設を要請していく。
この他、県では今年度、<1>中性子利用促進研究会(10テーマ)の発足・運営<2>中性子の産業利用応用事例集の作成<3>セミナー・シンポジウムの開催-なども進める。