県中川下水道事務所は管渠の修繕にあたり、これまでの追跡調査と試行によって塗布型ライニング材の採用では独自の評価を定め、修繕工事においてはポリウレア樹脂とアクリル樹脂を当面指定し行う方針でいることが分かった。同事務所では管渠のバクテリアなどによる腐食が進み、防食対策は文字通り闘いであった。そこで、この4年におよぶ同事務所の試行錯誤と行き着いた対策としてのライニング材採用、今後の工事の流れ、試行による入札上の壁と課題などについて上・中・下の3回に分けてドキュメント式で連載する。
第1回目の今日は、管渠腐食の原因とその対策決定までの試行錯誤について紹介する。
同事務所管内は他の下水道事務所より何ゆえ管渠の腐食が多いのか、歴代事務所職員のナゾであった。それは管轄区域の特徴からくるものであることが言われてはいた。では、どのような特徴かと言うと、関東平野の真ん中であり、平地であることから水の流れが速くなくむしろ同じ位置に留まり流れることがない。したがって同じ状態であると湿気が多いことも手伝い腐食する。
しかし腐食のメカニズムが分からなかった。どうやら下水道の中に空気がないところで=嫌気性で活動し硫化水素(H2S)をつくるバクテリアが潜んでいることが判明。さらに空気のあるところ=好気性で活動するイオウ酸化細菌というバクテリアが硫酸(H2SO4)を生成している。それらが混ざり化学反応すると中性となり、コンクリートの強度が弱くなり管渠に穴が空き腐食が進む。中性はph7程度だが、同事務所ではph12程度になることからいかにコンクリートが腐食されているか分かる。
そこで同事務所は硫酸とコンクリートの間に塗布型ライニング材を貼り付け互いに触れ合うことがないようにすることで管渠のコンクリート強度を保とうとした。
ライニングにはセラミック、ポリウレタン、ビニール、アクリルなどの10種類程度の製品があつたことですべて試行し追跡調査を行った。
酸化水素の濃度が高くなると硫酸を生成する率が高まることから、腐食管渠の度合いを各ppmごとに4段階に分けて評価した。その評価により補修しやすいのか否かにあてはめ、腐食度合い=コンクリートの強弱を設定した。濃度が50ppm以上では最悪の1類、10ppm以上50ppm以下を2類、10ppm以下を3類、その他を4類と色分けした。さらにそれぞれ補修しやすいのか、しにくいのかを判断し、耐用年数10年間をもてるようにライニングを採用し、10年以上もたせる値段の高い工場の成製品までA種からD2まで5段階で規程している。
同事務所ではポリウレア樹脂とアクリル樹脂が製品としての機能を働かせる「養生期間」が最短の1日であったことから採用を決めた。水を流しながら補修するため期間が短い必要があり、その2製品を決めたのだ。
したがって、管渠修繕工事などの防食工事は今後はすべて2つの製品を予め規程し工事を進めるようにしている。今年度は3件発注している。
また、劣化度調査を2本に分けてコンサルタント委託し7日に第1回の打ち合わせを終え、今後本格的に調査に着手する。その後その箇所を実施設計委託し、18年度の工事に向けて準備するというある程度のサイクルも決めている。
ライニングは日々日進月歩で技術開発が進み、今後も同事務所では手探りと試行錯誤し2つの樹脂を採用しつつより良い製品も追及していく方針でいる。
明日の第2回(中)は、今後の調査業務のあり方と今年度の調査内容、18年度工事発注の展望などについて紹介する。また第3回(下)はこれまでの同事務所の管渠修繕の入札の取り組み立ちはだかると課題について紹介する。(この連載は渡辺喜光が担当する)。