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長生郡市地籍調査協会

「地籍2050」を宣言/地籍調査で未来を拓く/オンラインで出版講演/長生郡市地籍調査協代表/石塚修氏

2021/12/27 日刊建設タイムズ

 (一社)長生郡市地籍調査協会代表理事で、㈱コーケン代表取締役会長の石塚修氏による著書「地籍調査で未来を拓く」(展望社)の出版記念オンライン講演会が、11月に開かれた。同書は、2013年に自身が出版した「みんなの地籍」に次ぐ2冊目として執筆。地籍調査の早期完成を願い、測量士50年を体験した著者が、測量人として書き上げたもの。オンライン講演会に併せて、業界を挙げて全国の地籍調査を2050年までに完成させる「地籍2050プロジェクト」の取り組みも宣言。官民業に向けて、広く協力を呼びかけた。

<本文>

 著書「地籍調査で未来を拓く」は別名、長生郡白子町の地籍調査を10年で仕上げた男が勧める「楽々スピード地籍調査術」(1%の費用負担でできる地籍調査とは)。みんなの地籍で提唱した「千葉長生方式」により、調査着手から10年で完了した実例をもとに進行。

 「地籍調査の早期完成は業界の使命」と位置付ける著者(石塚氏)が、地籍調査は「なぜ進まないのか」「なぜ早期完成が必要なのか」「どうすれば早期完成ができるのか」を、地籍調査の推進活動20年の実績を踏まえて、具体的に示しているのが特徴。

 

 2050年までの全国地籍完成には

 

 「2050年までに全国の地籍調査が完成するには」として石塚氏は、期限付きの地籍調査が決定し、事業予算が確保され、利益の出る地籍調査になれば「業界が前向きになる」と指摘。

 それにより、①企業や技術者の未来を拓く②人を採用して教育する③二項委託で実施体制をつくる(大規模に且つ認証遅延も防ぐ)④地元の市区町村に啓発強化する――ことで「市区町村がやる気になり、職員が前向きになる」と踏んでいる。

 

 20年総予算4兆円 従事技術者40万人

 

 そのためとして氏は「2030年スタート時の体制」を仮説。毎年の予算は、現行の250億円から8倍の2000億円(うち県・市町村負担は100億円)に増額し、2050年までの20年間の総予算として4兆円が必要と唱える。

 実施体制のうち就業技術者は、現行の2500人を2万人に増員し、20年間で40万人とする。現在の(一社)全国測量設計業協会連合会(国測協)の会員は約400社で、就業技術者が約2000人。これに非会員の200社を加えた600社としても「到底やりきれない」と指摘。2030年までに「5000社/2万人が必要」とした。

 

 地籍を志す若者は5年間で離職ゼロ

 

 自社(㈱コーケン)の取り組みの説明では、2010年から地籍調査の技術者として毎年、新卒大学生を採用し、これまでに30人の新卒社員が入社した。それにより、社員は33歳未満が25人、30歳未満が20人にのぼるという。

 その間に離職した新卒社員は5人で、内訳は3人が家庭の事情で異業種に、2人が市町村の中途採用で転職。最近5年間で採用した16人の新卒(大卒・専門卒・高卒)社員の離職はゼロだという。

 これらのことから石塚氏は、業界の高齢化を止めるには「地籍調査が最適」とし「業界の未来は地籍調査をやることだ」と断言する。

 

 2029年までに官民業の環境整備

 

 全国の地籍調査を2050年までに完了させるための提案として石塚氏は、①千葉長生方式(先進企業と地元の測量会社が連携した大規模な組織での二項委託方式)を採用②2029年までに官民業の実施体制等の環境を整える③2030年から新たなスタートを切る④全国規模の取り組みを100人以上の協力者が中心となり、啓発活動や全国の関係者に働きかけを行う――と提唱。これらの取り組みを「地籍2050プロジェクト」として宣言した。

 

 千葉長生方式での体制づくりが前提

 

 石塚氏によると「地籍2050プロジェクト」の考え方は「今の予算ではなく、今の考え方ではなく、今のやり方ではない」と断言する。

 総じて、全国的な啓発活動から予算を8倍にし、利益が出ないと言われている部分を単価アップする。地籍に係る就業人口を今の8倍の2万人とし、従事技術者の育成教育を行う。

 千葉長生方式で20年以内に完成する体制づくりを行い、これらを「業界の未来に向けた事業」として2029年までに達成。千葉長生方式で大規模に進め、2050年に全国の地籍調査を完成させるもの。

 

 「200年かかる地籍調査を30年以内に完了させる」ための協力の呼びかけ

 

【地籍調査整備の遅れ】

 〇全国の進捗率52%、千葉県は17%

 〇今の予算ペースでは今後200年以上を要する

 〇今のやり方では半永久的に終わらない!?

 〇この遅れは異常、でも業界では常識、仕方ない!?

 〇伊能地図が1821年に完成して今年が200周年

 〇伊能地図から70年後に明治の地租改正で今の公図ができた

 〇1951年に国土調査法が制定され今年で70年が経過

 〇この遅れを一刻も早く取り返すことが業界の使命であり、官民業三方良しの事業として未来を拓く

 

【地籍調査が遅れている理由】

 〇公共測量に比べて採算性が悪い

 〇一度始めたらやめられない

 〇この業界で働く人がいない

 〇地籍調査事業に消極的な人が多い

 〇予算が増えない、大規模な体制が作れない

 〇市町村職員の精神的負担が大きい

 〇事業予算が減額される

 〇地籍調査の必要性を一般市民に啓発できない

 

【早期完成が不可欠な理由】

 〇事が起きてからでは手遅れ=①土地を売ろうとした時②道路を新設または拡幅しようとした時③公共施設を建設しようとした時④開発行為をする時⑤土地の相続をする時⑥釈迦資本整備は地籍調査が最優先の事業

 〇時間の浪費=関係地権者の理解が得られないことが多い

 〇細切れで行った時の費用は市町村の費用負担の100倍以上

 〇個人で行う場合は実費負担となり、1か所当たり30~100万円

 〇市町村の境界管理人件費経費等は、遅れればそれだけ増える

 〇土地所有者が安心して暮らせる

 

【地籍調査完了後の未来】

 〇地籍調査の早期完成で国民・行政・業界の未来を拓く

 〇すべての国民に貢献できる

 〇すべての事業に優先すべき事業

 〇土地に関係するすべての基礎

 〇不動産売買、土地分筆登記、用地測量業務費の削減

 〇市町村の境界管理担当職員の労力、人件費の削減、住民サービスの向上

 〇ドローンで計測した3D地図データに境界線の重ね図で設計の自動化、土地利用計画の見える化など

 〇災害を予測する地図として活用もできる

 〇地籍が終わった後の未来には、全く違う世界がある。その効果は計り知れないものがある

 〇個人の土地の保全や土地の売買のほか、土地に係わる建築、土木工事の計画など、あらゆる土地に係る社会資本整備に不可欠なものが地籍調査のデータ

 〇地籍調査が終わると、データの利活用や計画などをパソコン上で確認することが可能

 〇3次元・4次元地図など、多目的且つ高度利用が可能となる

 〇本来の21世紀の測量がスタートする

 

【最優先事業且つ早期の完成が不可欠】

 〇スケールメリットを大規模に進めること

 〇復元性が高く効率的

 〇基礎データはできるだけ早く

 〇費用対効果が絶大

 〇財政的に厳しい時こそ、1~5%の費用負担でできる事業

 〇公共事業に着手する前に、地籍調査が終わっていることのメリット

 〇早期完成は国民に公平

 〇早期完成は国民の安心と利益を

 

【1%の費用負担でできる地籍調査は】

 

 〇費用負担は県と市町村が各25%、国が50%=①特別交付税80%の交付を受けると5%負担②地籍調査の単価は公共測量単価の20%(5分の1)。地籍調査は100ha単価、公共測量は1ha単価(大規模100と小規模1の単価は当然違ってくる)

 〇①×②=1%となる

 〇県・市町村の費用負担は公共測量単価の1%。ただし、不交付団体は5%

 〇こんなに費用対効果のある事業は他にはない

 

【地籍調査が公共測量単価の1%または5%の理由】

 〇1ha当たりの単価(諸経費含む)(公図登記簿調査・連続図作成・境界確認・基準点測量・境界測量・境界点間測量・用地実測図作成・面積計算等=公共測量/約250万円(諸経費率80%含む):100%。地籍調査/約50万円(諸経費率58%含む):20%

 ①50%が国、25%が県、残りの25%が市町村の費用負担

 ②費用負担25%のうち80%の特別交付税で

 ③県・市町村は実質5%の費用負担

 ④地籍調査は公共測量単価の20%。従って、③×④=1%となる。

 

【(一社)長生郡市地籍調査協会/千葉長生方式の実績】

 〇2011年4月1日設立=茂原市早野に本社を置く

 〇協会会員14社、総勢130人以上=測量士66人/測量士補37人/土地家屋調査士13人/地籍総合技術監理者4人/地籍工程管理士4人/地籍主任調査員46人/地籍調査管理技術者6人/筆界特定調査員経験者6人/A?R認定資格者5人

 〇2020年度までの10年間に4町1村1市から総受注額50億円

 〇白子町10年、長柄町11年で調査完了。睦沢町・長生村・長南町20年以内に完了予定

 〇1年の実施ペース=15~20?(約2万筆)

 〇2021年6月に(公社)全国国土調査協会から優良作業機関の認定を受ける

 

【長生郡市地籍調査協会の特徴】

 〇地元の測量会社が中心となり、土地家屋調査士や先進企業と連携して一般社団法人を組織。10条二項委託で市町村職員に代わって円滑かつ大規模に進め早期完成を目指す

 〇運営方針=①権利の前に義務が先(努力した人が報われる)②相手や住民目線の行動③みんなで上手く正しく(地域の測量会社や土地家屋調査士が力を合わせ、円滑且つ技術の研鑽や効率化を図り、作業規程や法令順守により行う)

 

 地籍2050プロジェクト

 

【私の提案/全国の地籍調査を2050年までに完了させる】

 〇千葉長生方式(先進企業と地元の測量会社が連携した大規模な組織での二項委託方式)により2050年までに完成させる

 〇2029年までに官民業の実施体制等の環境を整える

 〇2030年から新たにスタートし、2050年までに完了する

 〇以上の全国規模の取り組みを100人以上の協力者が中心となり、啓発活動や全国の関係者に働きかける

 以上の取り組みを「地籍2050プロジェクト」とし、ここに宣言する

 

【プロジェクトの概要】

 〇全国的な啓発活動から予算を8倍にする

 〇利益が出ないと言われている部分を単価アップする

 〇地籍に係る就業人口を今の8倍の2万人にする

 〇千葉長生方式で20年以内に完成する体制をつくる

 〇以上の体制を業界の未来に向けた事業として2029年までに達成し、千葉長生方式で大規模に進める

 〇2030年からスタートし、2050年に全国の地籍調査を完成する

 

【プロジェクトのマイルストーン】

 〇2021年度=2050PJの宣言、キックオフ/100人の協力者と12人のチームメンバーでスタート

 〇2022年度=全国各地で2050PJを啓発/非営利法人を設立

 〇2025年度=2050を閣議決定/官民関連団体で実施体制づくりをスタート

 〇2026年度=市区町村をはじめ測量会社や調査士事務所向けの説明会

 〇2027年度=計画機関で地籍調査事業計画策定/受託団体では着手にあたって準備

 〇2029年度=第8次十か年計画策定

 〇2030年度=技術者2万人、毎年の事業予算2000億円で2050年までに全国の地籍調査完成に向けて着手

 〇2050年度=全国の地籍調査が完了し、本来の21世紀の世界がスタート

 

【200年かかる地籍調査を30年以内に完了させる】

 完成に200年以上要する地籍調査をそのまま容認するのか、全国の測量会社が協力をして、2050年までに完成させて未来を拓くか、あなたはどちらを選びますか?

 

 国家的事業で立ち上がる時

 

 〇地籍調査の意義、実施後の絶大な効果、国民の安心とメリット、すべての事業に優先すべき事業

 〇やることの効果は絶大。費用対効果100倍以上。やらなければ損失は膨大

 〇測量業界の未来と国民の未来を両立できる事業

 〇測量業界には、若い人が集まらなくなっている。地籍調査を早期完成させるためには、多くの若い人材が必要

 〇弊社(㈱コーケン)では、地籍調査をやりがいとした新卒社員を採用。30歳未満の若い20人が社員として活躍

 〇日本中の測量会社や土地家屋調査士が、国家的事業として立ち上がる時だと考える

 

【プロジェクト協力者の募集】

 〇2050年には全国の地籍地図が完成し、本来の21世紀(最新の技術と地図データの高度利用)が始まり、200年の遅れを取り戻すことができます。こんな未来を拓こうではありませんか。

 〇このプロジェクトの協力者として参加しませんか。

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