県建設部は設計業務に工事施工者の視点を取り入れる「『設計・工事連携型』発注方式」の試行を検討している。技術管理室は効果として「施工性を考慮した設計」や「施工時の手戻り防止」を挙げ、「現在、制度設計の段階で試行時期は未定だが、対象工事としてまずは橋梁やトンネルの補修工事等を考えている」と話した。
同方式は、実施設計の段階から建設会社が技術協力で参画する「ECI方式」的なイメージ。ただし、ECI方式は発注者が建設会社と技術協力業務の契約を締結し、技術提案を求め、さらに発注者と建設会社との間で価格交渉が成立した場合には、随意契約により工事請負契約を締結できる形なのに対し、県が検討する方式は設計段階において概略設計により工事を発注し契約する。
これにより、①施工者が設置する仮設足場等を使用しながらの調査・設計が可能(コスト縮減)②発注者・施工者と共に現場状況や施設の損傷状況を確認しながらの設計が可能③補修工法や仮設計画等において、施工者の考えや技術を設計に反映④現場の設計変更に迅速に対応でき、交通の早期解放につながる(工期短縮)⑤事業全体が効率的に進捗し、事業効果の早期発現につながる―といった効果を見込んでいる。
技術管理室は「まずは早期の対応や現場の特殊条件に応じた施工方法が求められる橋梁やトンネルの補修工事等においてモデル箇所を選定する。それほど難易度が高くない案件も視野に入れている」と話した。
道路構造物の老朽化対応は大きな課題となっている。とりわけ橋梁は19年度時点で県管理橋梁の約45%に当たる1721橋が架設後50年を経過しており、10年後にはこの割合が60%を超える。現在も早期かつ計画的な修繕で財政負担の平準化や大規模修繕・架け替えの抑制に取り組んでいるが、新たな方式は対応の加速化につながるものと期待される。