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中小企業庁,国土交通省

【下請取引実態調査】約束手形の期間60日とする業者が74%に

2022/01/14 本社配信

 全国約1万8000の建設業者を対象に、国土交通省と中小企業庁が行った2021年度下請取引等実態調査の結果がまとまった。20年10月の改正建設業法施行後、初の調査となり、今回から加えた新規項目では、中企庁と公正取引委員会からの改善要請等を踏まえ、約束手形の手形期間を60日としている業者は予定・検討中を含め73・8%だった。また、元請負人から下請負人に対し、労務費の内訳を明示した見積書の交付を働き掛けている業者は66・3%、工期の関係では94・7%の業者は追加工事等が生じた場合、工期変更を認めていると回答したことが分かった。

 約束手形に関しては、手形期間を60日以内とする予定がないと回答した理由として「特に理由はないが、現在の手形期間が慣例となっているため」が最も多いことから、今後は慣例に捉われない取り組みが求められる。

 建設工事を下請負人に発注したことがある建設業者(1万2427業者)が回答すべき調査項目について、指導対象となる29の調査項目に対し、全て適正な取引を行っているとした適正回答業者率は10・8%(1343業者)だった。前年度比では横ばいとなり、2年連続で10%を超えた。29項目中、21項目で同回答率が増加。最も改善されたのは「施工体制台帳の添付書類(公共工事)」だった。適正回答率が低かったのは「見積提示内容」「契約方法」「契約条項」「手形の現金化等にかかるコスト負担の協議」などの項目。契約方法では特に知事一般の業者の適正回答率が低く、17・6%が依然として「メモまたは口頭による契約」を行っている。契約条項では、法改正で加わった「工事を施工しない日または時間帯を定めるときの内容」を契約書で定めていない例が目立つ。

 元請負人による下請負人へのしわ寄せ状況では、元請負人から「不当なしわ寄せを受けたことがある」と回答した業者は1・2%で前年度と同じ。内容は「指値による契約」が最も多かった。

 技能労働者への賃金支払い状況では、賃金を引き上げた(予定含む)と回答した業者は82・8%で、前年度比3・5ポイント増加。理由は「技能労働者の技能と経験に応じて給与を引き上げ(建設キャリアアップシステムなど)、処遇を改善する必要があると考えたため」が最多だった。引き上げない理由は「経営の先行きが不透明で踏み切れない」を挙げる業者が多い。

 国交省では、調査結果により建設業法に基づく指導の必要があるとされた業者には是正措置を講じるよう指導を行っている。また、必要に応じ許可行政庁で立入検査等を実施する。さらに、立入検査の対象として未回答業者やしわ寄せを行ったとされる元請負人も選定し、下請取引の実態確認も進めていく。

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