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アドブルー、いまだに品薄が続く

2022/01/25 群馬建設新聞


ディーゼル車の稼働に必要不可欠な尿素水「アドブルー」の品薄状態が続いている。2021年10月ごろ、市場から消えるとささやかれはじめ、12月には県内の給油所から姿を消した。こうした状況を受けて、経済産業省は12月24日、需給緩和に向けた対応を行っていると公表。状況の回復を急ぐとともに、高額転売への注意喚起を行った。原料となる尿素の国内供給量は22年1月中に落ち着く見通しだが、地元建設業などエンドユーザーが落ち着きを実感するまでには、数カ月を要しそうだ。

尿素水はトラックや重機などディーゼル車の排出ガスを浄化する装置(尿素SCRシステム)で使用される。05年の排ガス規制をきっかけに各メーカーの装置導入がはじまったとされる。装置内のアドブルーが足りない状況で、エンジンの再始動はできない。

建設業界では21年10月ごろから、尿素水の仕入れ先などからの情報により、品薄の気配を感じていたという。各社の企業努力により、尿素水の在庫を確保し、必要な建機などに回している。群馬県建設業協会の青柳剛会長は「先手を取って各社が備蓄を確保した。ただし、備えは、あくまで(緊急時への)備えであり、それを使用している今の状況は、不安定と言わざるを得ない」とコメントしている。厳しい状況が続いているが、県内の工事では、尿素水不足を原因とする現場の中断は確認されていない。

品薄の原因として、原料となる尿素不足があがる。中国からの輸入が停止しており、国内の供給量が減少している。こうした状況を受けて経産省は、国内の尿素生産事業者へ最大限の増産を要請。1月中には市場全体のマクロ的な視点で、国内供給量が平時における需要量全体を上回る見通しであることを示した。

原料を製品化するまでに1~2カ月を要することから、市場に製品が行きわたるまでには、もう少し時間が掛かるとされる。2月に中国で開催される北京五輪が終わるまで、流通量の回復は難しいとの見方を示す卸売業者も多かった。

品薄だけでなく、値上がりも深刻。10月以前の価格と比較し、2~3倍に高騰しているという。フリマアプリやオークションサイトでは高額転売も行われている。市場全体でみると微々たる量だが、入手経路が不明なものもあり、購入者には冷静な対応が求められる。

工事発注などを担う国や県、市町村はこの状況を静観する。品薄はもとより、尿素水の存在自体を把握していない自治体も目立った。対策を講じているとの回答はなく、収束するのを待つばかりといったところだ。

尿素水の品薄はまだ続くとされる。また、回復したとしても、流通や社会情勢によって再発する可能性がある。尿素水に限らず、除雪など道路維持や各建設現場で必要とされる、原料・資材・人手を確保する体制を整えなくてはならない。生産業界と協定を結ぶなど、具体的な自衛の策を講じる必要がある。

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