新潟県と関東を結ぶ交通の大動脈である関越自動車道。その象徴でもある関越トンネルを含む水上IC~小千谷IC間の87kmを管理している東日本高速道路(NEXCO東日本)新潟支社の湯沢管理事務所管内で2020年12月、大雪による大規模な車両滞留が発生した。本年度も例年より降雪量が多い状況だが、これまで目立った車両滞留は発生していない。これには対応を踏まえた施策を行っていることも要因としてあるようだ。昨年6月に同事務所長に就任した田之脇良徳所長に、今シーズンに向けて準備を進めてきた雪氷対策の内容や管内の事業などについて話を聞いた。
田之脇所長は「まず、大雪時の対応として、『人命を最優先に、大規模な車両滞留を徹底回避する』という方針のもと、新潟支社全体で計画的IC閉鎖、予防的(広域)通行止めの仕組みを取り入れました」と話す。事務所独自の新たな取り組みとして「除雪車両の増強、状況把握のために本線上にカメラを35台増設し、ウェアラブルカメラやIP無線などの防災対策室(本部)への連絡手段の増強、スタックが発生した箇所への消雪パイプの新設を行い、さらに関係機関と連携した乗員保護訓練を実施した」と、具体的に行ってきた内容を示した。「これらの準備を踏まえ、事務所グループ一丸となり雪氷対策に取り組むことで、これまで例年よりも降雪量は多いですが、長時間かつ大規模な車両の滞留は発生していない」と成果を強調。今シーズンの残りも降雪に予断を許さない状況が続くが、「引き続きしっかりと管理していきたい」と気を引き締めた。
関越道は完成してから40年近くが経過し、橋梁やトンネルなどの構造物については老朽化が進んでいる。田之脇所長は「その対策のための工事を着実に進める必要がありますが、当事務所管内は重雪氷地域ということもあり、工事ができる期間が限られています。雪解け後すみやかに工事に着手できるように、今のうちにしっかりと準備していきたいと考えております」と話す。具体的には「今春からは一部区間で対面通行により大規模な床版取替工事に着手します。また、11kmの長大トンネルである関越トンネルについても、特別高圧(6万6000v)の電力設備や換気設備をはじめとする諸施設を停止せずに更新する計画を立案し、10年スパンでの設計・工事に着手していきます」と見通しを示した。さらに「国交省から受託して、関越道(六日町IC付近)の下を非開削工法にて地下構造物を構築する工事を昨年末に契約しました。国交省が事業を進めている八箇峠道路の一部となる区間で、地元の期待も高いことから、早期完成に向けて着実に工事を進めていきます」と意気込んだ。
こうした事業や維持管理に欠かせない建設業者に対しては「除雪をはじめとする道路管理、老朽化対策や新設工事など、当事務所は多岐にわたる事業を担当しておりますが、これらについては、建設産業に関わる皆さま方のご協力が不可欠です。皆さま方の力をお借りして、安全・安心な高速道路空間を提供してまいりたいと考えております」とメッセージを寄せた。
【略歴】たのわき・よしのり
1995年4月に日本道路公団入社。東北支社仙台工事事務所長、本社業務監査室主幹を経て2021年6月25日から現職。兵庫県出身の50歳で東北大学大学院卒。特技は「中学時代に全国大会に出場した卓球」と語る。