太田和美・柏市政における初めての当初予算が3月22日に成立した。2021年10月31日投開票の市長選挙で政策提言として掲げた「市立柏病院の現地建て替えによる基幹病院としての機能充実」「学校給食の自校方式維持」「駅前への『こども広場』と『こども図書館』の設置」に関する事業費を盛り込んだほか、「公設総合地方卸売市場併設『道の駅』」や「(仮称)子ども家庭総合支援センター」の検討・整備を進めていく方針だ。独占インタビューに応じた太田市長は、柏市について「都市機能の更新時期を迎えている」との見解を示し、持続可能でサスティナブルなまちづくりに取り組んでいくと話した。また、原則、市内に所在することを入札参加の条件とすることで、経済の活性化に努めていく考えだ。
――柏市への思いを聞かせてください。
太田 生まれ育った柏を誇りに感じてきました。恩返しをしていきたいという思いで、第7代柏市長に就任させていただきました。進学や就職を機に柏に来られた方にも、「ふるさと」と思っていただけるまちにしていきたいと考えています。人に優しいまちづくりを行い、皆が誇りに思えるような、より暮らしやすいまちにつくり上げていきたいと考えています。
――柏市の現在の印象はいかがですか。
太田 商業のまちとして発展し、1970年代には日本発のペデストリアンデッキが柏駅前に建設されました。しかし、柏駅周辺の求心力は次第に失われています。2016年には、そごう柏店が閉店し、駅東口のにぎわいが大きく低下してしまいました。そういった社会的背景からも、都市機能の更新時期を迎えているのではないかと考えています。次の世代、次の50年に向けて、持続可能でサスティナブルなまちづくりに取り組んでいかなければなりません。
――抱負・展望をお願いします。
太田 国会議員を3期にわたって経験してきましたが、地方行政では地域の皆さんとの距離の近さを実感しました。また、自治体の判断でスピーディーに政策を決断、実行することができるということを身をもって感じています。例えば、ウクライナの避難民に対する生活支援をどこよりも早く決断することができました。43万人を代表する、たった1人の代表としての重責を感じながら、市民の皆さんの思いに寄り添っていける市政を行っていきたいと思っています。
――現地建て替えを計画している市立柏病院についてお聞かせください。
太田 市民の命を守ることを最優先に、現地建て替えを行う方針を固めました。今年度当初予算には基本計画の作成業務委託2000万円を盛り込みました。従事する医師やスタッフの意見を参考にしながら、必要な医療機能を具体化します。
現地は、ひょうたん型の形状で空地が少ないため、関係者の知恵を絞り、整備を推進していきます。
建て替えのスケジュールとしては、22年度に基本計画を策定し、23年度に基本設計、24年度には実施設計をまとめ、25年度の着工、27年度の竣工を予定しています。
――学校給食の自校方式の維持についてはいかがでしょうか。
太田 給食室の老朽化に伴い、財政面を重視したセンター方式の導入が検討されてきました。しかし市は長年、教育の観点から自校方式で給食を提供しており、それは財産だと思っています。自校方式の維持は、センター方式への移行と比べて多くの建設費を要しますが、給食は豊かな栄養を児童・生徒に提供するだけでなく、食育の場としても重要であると考え、自校方式を維持することとしました。
学校給食衛生管理基準が厳しくなっていますので、実現性を探るとともに、それぞれの学校に適したあり方を検討するため、調査費を予算計上しました。
――「駅前こども広場」と「こども図書館」の設置については。
太田 現在、子育て支援施設は駅周辺に点在しています。そこで、利便性が高い駅周辺に機能を集約し、子育て世代と子どもを歓迎する市の思いを象徴する施設を設置したいと考えています。気軽に行ける場所づくりを行い、子育て世代同士の交流や相談、子育てに関する情報収集などを1か所で行える場をイメージしています。
今年度は、子育て世代の実態やニーズを調査し、場所や機能を検討します。
――8日には「公設総合地方卸売市場併設『道の駅』可能性調査業務委託」の公募型プロポーザルを公告しました。
太田 市の公設総合地方卸売市場は開設から約50年経過し、老朽化が進んでいることから、今年度の予算にも再整備に係る費用を計上しています。さらに活性化や地域振興を目的として、集客力があり、地域振興の面でも実績を有する「道の駅」の併設の可能性を検討していきます。
――児童相談所の機能などを包括する「(仮称)子ども家庭総合支援センター」についてはいかがですか。
太田 青少年センターを解体し、児童相談所や青少年センターなど、乳幼児から青少年までの幅広い層に関係する施設を建設する予定です。22年度は、21年度に行った施設整備の検討結果を整備計画としてまとめ、公表します。さらに、22~23年度の2か年で基本・実施設計をまとめ、24~25年度の2か年で施工し、26年度の開設を見込んでいます。
――市内の建設業者への思いを聞かせてください。
太田 公共施設や社会インフラの整備、維持補修に加え、自然災害発生時における復旧対応などにおいても多大なる貢献をいただいていることに心から感謝しています。今後も地域の守り手である皆さんと市が両輪となって、安心・安全な市民生活を実現するための取り組みを進めてまいりたいと思います。
公約にも掲げさせていただきましたが、市内で完結することを基本に、「所在地が市内にあること」を入札参加の条件とすることで、市内経済の活性化に努めていきたいと考えています。引き続き、適格な工事の施工に協力をお願いします。
――公契約条例の導入についてはいかがでしょうか。
太田 条例制定の必要性を検証するため、公契約に従事されている事業者と労働者の双方から情報収集し、分析に着手していきたいと考えています。国内で初めて条例を制定した野田市をはじめ、条例制定済みの72の地方公共団体に、条例制定の背景や市民生活への影響をよく調べていきたいという段階です。
【略歴】
1979年8月28日、柏市生まれ。日本大学法学部法律学科卒業後、2002年に㈲共進住宅を創業し、代表取締役に就任。05年、県議会補欠選挙に史上最年少の25歳で当選。06年、衆議院千葉7区補欠選挙で当選、全国最年少(当時)の国会議員となる。3期務めた後、21年10月31日投開票の市長選挙で初当選を果たした。
柏の街並みを見ながら愛犬2匹と散歩することが「リラックスできる貴重な時間」。