国土交通省は、本格的な河川堤防の強化対策に向けた検討に着手した。越水に対して減災効果を発揮する「粘り強い河川堤防」の技術開発に必要な検討を行うため、有識者検討会で議論を始めた。全国で142カ所の堤防決壊が発生した「令和元年台風第19号」を受けて設置した有識者検討会が、洪水時に河川堤防を越水した場合でも決壊しにくく、決壊までの時間を少しでも長くする効果を発揮する粘り強い構造の河川堤防の整備を、危機管理対応として実施すべきとした提言を受けたもの。検討会で必要な性能の具体化や、構造物の安定性を長期的な維持管理の在り方などを協議する。今後、導入支援機関や技術開発を公募・選定し、業界団体や企業、大学、関係機関が連携して研究・開発を行い、小規模試験施工等の実施につなげる。
20日の初会合で、水管理・国土保全局の井上智夫局長は「近年各地で水害が激化頻発化している中で、堤防越えて越水し、堤防が決壊する事例が増えている。できるだけ堤防を強化して越水による被害を軽減したい。技術的な検討により、しっかりと対応していくための今後の方向性を相談したい」と述べ、協力を要請した。座長には、井上局長の指名により中央大学研究開発機構の山田正教授が就いた。
現状、越水に対する粘り強い河川堤防の技術は、強化対策の効果に幅や不確実性があることから、必要な性能を評価し、設計できる段階には至っていない。そのため、粘り強い河川堤防工法の公募、パイロット施工、大型の水理模型実験等による確認も行いながら、対策工法を検証し技術開発を進める。国交省では、対策工法の評価を踏まえて本格的な河川堤防の強化対策実施を検討していく。
技術開発の対象とする構造は「表面被覆型」(断面拡幅型含む)と「自立型」(自立式特殊堤含む)、「その他の構造」を想定。評価の目安は「越流水深30cmの外力に対して、越流時間3時間」とし、その間は越水に対する性能を維持する構造とすることを視野に入れる。