県企業局は、野呂川発電所地下調整池建設事業について近く事業評価作業に着手する。これまで進めてきた、環境調査(動植物、猛禽類調査)、水理検討など様々な調査や検討結果を踏まえ、建設の是非も含めた方向性の具体検討の実施段階に入るもの。建設着手の可能性が強まれば、その後、平成20年度頃までの測量や設計作業を予定し、事業着工の運びとなる。これまでに概算として示してきた約36億円の事業費は、周辺環境対策などで増加するものと見られている。
同事業は、県が重要施策・事業に指定している11部等28事業の中に含まれている。目指すべき県土像である「誇れる郷土、活力ある山梨」の実現を図るため、特に重要な施策・事業の進行管理を行うもので、同事業については環境調査(動植物、猛禽類)、水理検討の結果を踏まえ、諸対策や最適計画、事業費等の検討を行うことが盛り込まれている。
同調整池は、南アルプスに源を発する早川の最上流にある、県営野呂川発電所(南アルプス市芦安芦倉地内)の導水路に並行して、直径約5m、延長約6kのトンネルを築造、最大約10万立方mを蓄え、電力消費の多い昼間のピーク発電量を増やすもの。
地下調整池を併設することで、電力消費の少ない夜間に河川水を同調整池に貯水し、電力消費の多い昼間にこの水を利用して発電する仕組み。これにより、野呂川発電所のほか、下流の奈良田第1発電所、奈良田第2発電所を含めた3発電所で、電力の需要に合わせた発電(ピーク発電)が可能になるという。
同局では、昨年度に東電設計へ委託した建設可能性調査に続き、今年度には同設計に動植物調査(570万円)、アイエヌエーに基本調査(490万円)をそれぞれ委託しており、同調査結果を踏まえた検討を進めてきた。
昨年度の建設可能性調査結果では、(1)電力需要が増加している昼間時間帯に一般家庭約8000軒分に相当する2万3900kw(最大)の電力が供給できる(2)昼間時間帯の火力発電所の運転抑制により、1年間にドラム缶約3万8000本の原油が削減でき、これにより約2万1000tもの二酸化炭素の排出が削減(約5900haの面積に植林したことに相当)され、地球温暖化対策に貢献できる、などの効果があることが示されている。