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東日本高速道路(株)新潟支社

高速道路では初の矢板工法トンネルにインバート設置工

2022/08/02 新潟建設新聞

 東日本高速道路新潟支社は、北陸自動車道下り線で進められる米山トンネルのインバート設置工事の現場を公開した。矢板工法で建設された高速道路上のトンネルでは初のインバート設置工事となる。施工は飛島建設が担当。現代の工法で施工されたトンネルと異なり掘削による既設覆工コンクリートの沈下、損傷の懸念があり、沈下防止対策や下り線全面通行規制に伴う交通安全対策に配慮した施工が進められている。

 米山トンネルは全長1616m。中越沖地震での覆工の変状や盤ぶくれで最大10㎝の路面隆起が発生しており、対策として450mをインバード設置による閉合構造とし、安定性を向上させる。

 工事は第1工区(250m)、第2工区(100m)、第3工区(100m)に分けて、下り線を規制した全断面掘削で行われている。工程ベースの進捗率は7月下旬で約50%となっており、第1工区でインバートコンクリートの打設を進めているほか、第2工区では打設が完了。第3工区は掘削が行われる。

 覆工の沈下対策には、壁面に長さ4mの補強ボルト3本を1・5m間隔で計1800本設置。事前のシミュレーションや有識者の助言を受けて覆工の状況を確認しながら6mずつ厚さ50cmのインバートを施工している。今後10月末までにインバート設置と埋め戻し、舗装工事を完了させ、下り線の全面通行規制を解除。鉢崎トンネル、柿崎トンネルでの繊維シート補強による?落防止対策を含めて2023年度雪氷期前までの工事完了を予定している。

 現場代理人を務める飛島建設の佐々木和人氏は「あらゆる計測を行い地山の状況を確認しながら繊細かつスピーディーに工事を進めている。また工事に伴う対面通行区間での事故や故障車、落下物などに迅速に対応できるよう発注者と連係して24時間体制で監視を行っている。やり直しがきかない工事であり、大きな変異や事故を起さないよう高速道路初の工事を完成させたい」と語った。

 東日本高速道路長岡管理事務所の川上圭介所長は「供用から40年たったトンネルを将来にわたって健全に保ち、安心安全に引き継いでいくため必要な工事。一部区間では終日車線規制により北陸道利用者にご迷惑をおかけするが、ご理解いただきたい」とする。

 7月現在、矢板工法により建設されたトンネルは高速道路に379本あり、今回の施工で得られた経験や知見を今後の安全対策工事等に生かしていく。

【写真=トンネル内に設置されるインバート】


交通安全対策に重点

対面通行区間施工で


 米山トンネル下り線前後区間を5月下旬~10月末まで全面通行規制する同工事では、対面通行区間となる上り線で、万全の交通安全対策を実施しながら施工を進めている。対面通行区間の様子は24時間モニター監視を実施。新潟市内の管制センターおよび長岡管理事務所に加えて、坑口付近に交通監視室を設置し、現場で異変が起きた際には迅速に対応できる体制を取る。また交通監視室内には、車両滞留に備えて水や食料、簡易トイレなどを備蓄する。

 このほかドライバーに対する簡易情報提供設備の設置や東日本管内では3例目となる拡声放送による注意喚起、足元灯を設置。さらに車両突破防止のためロード・ジッパー・システムを使ったコンクリート剛性防護柵を設けるなど重点的な交通安全対策を行っている。

【写真=坑口の交通監視室と表示板、24時間モニター監視】

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