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国土交通省江戸川河川事務所

発注者の責任果たす/加速化対策で治水/守安邦弘 江戸川河川事務所長インタビュー

2022/08/09 日刊建設タイムズ

 6月28日に江戸川河川事務所長に就任した守安邦弘氏が、日刊建設タイムズの単独インタビューに応じた。「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」の予算を円滑に執行し、堤防整備などのハード対策を含む流域治水を推進する方針。また、都市河川を「街の中の貴重な自然空間」と捉え、地域での利用を見据えた河川環境整備に取り組む。建設業の健全な発展のため、働き方改革や生産性の向上などについて、発注者としての責任を果たしていきたいと話した。

 

 ――就任に当たっての抱負・展望は。

 守安 人口の多い首都圏を流れる河川の管理・整備を担うことの責任の大きさを感じ、身が引き締まる思い。流域の自治体からは、早期の治水対策に関する要望が多く寄せられており、しっかりと対応したい。河川整備は、国だけでなく、流域の自治体などと連携して進めていかなければならない。流域治水プロジェクトに基づき、「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」の予算を十分に生かしながら推進する。また、都市河川は街の中の貴重な自然空間であることから、地域の皆さまに利用していただけるよう、環境整備に取り組んでいく。

 

 ――江戸川左岸堤防整備について。

 守安 洪水に耐えるための断面が不足している箇所があるため、堤防強化を進めていく必要がある。上下流のバランスを見ながら、5か年加速化対策の中で進捗を図っている。2022年度は、野田市今上地先と流山市中野久木地先における低水護岸工事等を進める。

 

 ――江戸川高規格堤防整備のうち、市川市高谷Ⅱ期地区について。

 守安 市川市による背後地のクリーンセンター移設と事業調整しながら進めている。市はクリーンセンター移設の設計準備を進めている。事務所としては、移設予定地を除く盛り土の設計検討に取り掛かっており、23年度以降の工事着手を検討している。

 

 ――江戸川高潮対策について。

 守安 県との共同事業により行徳橋の架け替えを完了したことから、22年度は県が旧橋の撤去を発注する予定。事務所としては22年度または23年度に、旧橋付近等における高潮堤防整備を進める。

 

 ――そのほかの取り組みは。

 守安 コウノトリを指標としたエコロジカル・ネットワークを形成するため、生態系調査や協議会の運営などにより、自治体が取り組む河川環境づくりを支援していきたい。また、排水機場など河川管理施設について、しっかりと機能の役割を果たしていけるよう、維持管理に努める。

 

 ――23年度以降および5か年加速化対策後の展望は。

 守安 東京23区に近い流山市、松戸市、柏市は人口が増加しており、開発圧力が高い地域であることも踏まえて流域治水対策に取り組む必要がある。しっかりと予算を確保し、事業を進めていく。また、高台まちづくり、水災害リスク情報の公表、ハザードマップの整備、避難体制の強化、自治体との協力体制の構築などのソフト対策も、ハード対策と併せて推進する。

 

DXなどで魅力ある現場を実現

 

 ――地元建設業への期待は。

 守安 地元建設業は地域づくりの縁の下の力持ちであり、災害対応にも協力いただいている。建設業の健全な発展が重要であり、魅力ある業界を実現し、携わる方がやりがいや幸せを感じられるよう、i―Constructionやインフラ分野のデジタルトランスフォーメーション(DX)をはじめとする働き方改革や生産性の向上などの取り組みについて、発注者としての責任を果たしていきたい。現場から魅力的なものにしていくため、忌憚(きたん)のない意見をいただきたい。

 

 ――事務所におけるインフラ分野のDXの進め方は。

 守安 本省が3月に作成した「インフラ分野のDXアクションプラン」に基づくとともに、荒川下流河川事務所が行っている三次元データを活用した河川管理などの動きも参考にしつつ、何ができるかをしっかりと検討したい。また、事務所の組織を横断的に、かつ若手も交え、建設DXに関する勉強会を開催したい。

 

 ――建設資材価格などの高騰に関してはどうか。

 守安 物価の高騰が全建設業における課題と認識している。本局からの通知に基づき、しっかりと対応する。

 

 ――趣味、習慣は。

 守安 趣味は、イランに着任する前から嗜んでいる料理。千葉は海産物が豊富で、楽しみにしている。また、健康維持・体力維持のため、月50kmを目標としてジョギングしている。

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