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22年8月、資機材高騰のまとめ

2022/08/11 群馬建設新聞

新型コロナウイルスに端を発した資材価格の高騰が止まらない。ロシアのウクライナ侵攻により状況はさらに悪化。加えて円安により、輸入品をはじめ、価格高騰に拍車が掛かる。発注者側も資材高騰に対して柔軟に対応する姿勢をみせているが、手続きが複雑など課題は多い。物価高騰による倒産企業数は過去最多のペースで上昇中。先行きは依然として不透明で、建設業はこれまでにない窮地に立たされていると言える。

2019年12月初旬、中国の武漢市で新型コロナが報告され、わずか数カ月で世界的な流行に発展した。世界経済の混乱により、建設資材の高止まりが続く中、22年2月には、ロシアがウクライナへの侵攻を開始。石炭や原油など価格が跳ね上がり、連動して資材価格の高騰に拍車を掛けた。同時に、為替レートも大きな変動が発生。22年3月から円安傾向が強まり、1998年以来の1ドル=135円台の水準に。今後も円安傾向が続くと考えている市場関係者は多い。

資材に目を向けると、2021年の「ウッドショック」や「メタルショック」をはじめ、原油、生コン、ゴム、内装材など、あらゆる資材が高騰を続けている。

【ウッドショック】

高崎市で木材を扱う製造業者は「木材の価格は依然として高い水準を維持している」と話す。特に米松は19年の仕入れ値と比べ、2~3倍程度で取り引きしている状況。仕入れコストの上昇により、製品価格への転嫁を余儀なくされる。

木造住宅の工務店も、現在の状況は厳しいと口を揃える。施工中の案件は仕入れた木材でなんとか回しているとし「消費マインドの落ち込みから、新規案件の獲得にも悪影響が生じている。建売となると価格転嫁が難しいため、さらに厳しい」と語った。

【メタルショック】

鉄鋼類の値上がりも顕著だ。コロナ禍に加え、中国がカーボンニュートラルを目指すと表明したことにより、原料となる鉄鉱石と石炭の価格が上昇。ことしに入り、多少の落ち着きをみせたが、ウクライナ侵攻により、パニック的な暴騰につながった。

前橋市内の鉄構造業者は「コロナ以前と比べて、原材料費は2倍程度の価格で取り引きされている」と話す。続けて「契約前の見積もりで使用した単価と、契約後の仕入れ値に差が生じている」とし「受注者間での調整で、案件を回すのは難しい。施主を含めて、各部門で痛み分けをするほかない」と苦しい心中を吐露した。

【コンクリ・As】

コンクリートやアスファルト混合物、セメント類の価格も上昇を続ける。これら原材料となる砕石の生産業者は「これまでに特定の部材が高騰することはあったが、今は全てが高騰している」と状況を説明。砕石機材の価格、燃料費、電気代などの上昇から、8月出荷分から砕石価格の改定に踏み切ったという。

コンクリートやアス合、セメントの製造業者も同様の状況。北毛のアス合工場は「値上がりのスピードが早すぎて、定価を設定できない。必要な際は問い合わせを頂いて、価格を案内している」と現状を語った。セメントについても製造シェア上位4社が値上げを決定。1年に2度、計5000円/t以上の過去最大幅の値上げとなる。

【スライド条項】

価格高騰に対する施工者への救済措置として「物価等の変動に基づく契約変更条項(スライド条項)」があがる。国土交通省の調査で、受発注者間の15%、元下間契約の10%に、スライド条項が含まれていないことが判明。特に民間工事では物価変動リスクは受注者負担という考えが根強く、施主の理解を得られない傾向にある。立場の弱い中小企業に負担が集中しており、価格転嫁を円滑にするための対策が急がれる。

公共事業では国や県、前橋市などがスライド条項を設定。一方で受注者側からは「手続きが複雑で、人も時間も掛かる。企業や案件の規模にもよるが、請求しないことの方が多いのでは」との声もあがっている。一連の手続きを簡素化し、スピード感のある対応が求められる。このほか、社会情勢をリアルタイムに反映した予定価格の設定、柔軟な設計変更、資機材の納期を勘案した工期設定が重要となる。

【倒産ラッシュの影】

帝国データバンクの調査によると、7月倒産件数は499件。建設業は前年同月71件から95件と33・8%の大幅増となっている。また、物価上昇を原因とする企業倒産も増加傾向にあり、7月は31件だった。調査を開始した18年1月から22年7月までの物価高倒産は計558件にのぼる。ことしは、7月末時点で116件、過去5年間で最多のペース。早ければ月内にも、年間最多件数を更新する可能性が高い。

また、東京商工リサーチ前橋支店は、7月に1000万円以上で倒産した県内の企業は3件だったと発表。うち1件が建設業となる。新型コロナが増加傾向にあるなか、現在の状況が続くと、中小企業を中心に倒産が拡大する恐れがある。

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