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栃木県宇都宮市

宇都宮市LRT西側区間、概算事業費に400億円試算、24年に特許申請、26年着工へ、県教育会館まで5

2022/08/18 栃木建設新聞

 宇都宮市は17日、芳賀町と進める次世代型路面電車(LRT)整備事業について市議会に説明した。JR宇都宮駅西側ルートは、駅東口停留場~県教育会館付近(宝木町1丁目、駒生1丁目)の延長約5㎞を整備区間に設定。概算事業規模は駅東側ルートの平均整備距離単価と駅西側特有の地下埋設物状況等を勘案した結果、約400億円と類推。詳細設計で概算事業費を算定し、軌道運送高度化実施計画策定に向けた準備を進める。2024年内に軌道事業の特許申請、26年内の着工、30年代前半の開業を目指す。LRT導入による駅西側の経済波及効果は約810億円に上ると試算した。

 佐藤栄一市長は「LRTはネットワーク型コンパクトシティ(NCC)形成を支える必要不可欠な都市の装置。駅西側整備は駅東側との東西拠点をつなぐ交通基軸。効果の早期発現を目指し、官民協働による都市機能強化に全力で取り組んでいく」と述べた。

 市ではNCCの形成に向け、13年に「東西基幹公共交通の実現に向けた基本方針」を策定。駅東側の優先整備区間14・6㎞(市12・1㎞、町2・5㎞)に取り組むとともに、駅西側の検討区間を整理。駅西側区間は18年度に5つの区間概要を公表した。

 5区間は①駅西口~桜通り十文字(約2・9㎞)②桜通り十文字~護国神社(約0・8㎞)③護国神社~宇都宮環状線(約1・3㎞)④宮環~東北自動車道(約1・5㎞)⑤東北道~大谷観光地(約1・5㎞)。技術的検討を重ねた結果、①~③区間が該当する。

 駅東口停留場~県教育会館付近は、既存道路活用による折り返し運行施設確保に最も適した場所と判断。主要な停留場は公共交通の結節や拠点エリア、教育施設の集積を踏まえ、駅西口、二荒山神社、東武宇都宮駅、桜通り十文字、護国神社付近に配置する。

 その他の停留場は民間開発の動向を注視しつつ配置。大通り道路空間の円滑な交通やウォーカブルなまちづくりに資する歩行空間の確保を重視。1日当たりの利用者数は約2万7000人と試算。今後は通勤通学の実態や利用意向アンケート調査で精度を上げる。

 LRT運行と重複するバス路線の一部を再配置し、郊外部の地域拠点から都市拠点へアクセスする幹線バス路線や都市拠点内の回遊性を高める循環バス路線を充実。地域内交通はLRTやバス路線との乗り継ぎポイントを適切に配置。地域要望を計画に反映する。

 交通結節機能の高度化を図るため、東武宇都宮駅付近は周辺の民間開発と連携した将来的な施設整備を視野に入れる。桜通り十文字付近は歩行環境やバス待ち施設を充実。公共交通ネットワークが利用しやすい上限運賃制度や乗り継ぎ割引制度を導入する。

 買い物、食事、通院、就労といった都市活動を支えるまちの機能を誘導強化。立地適正化計画に基づき、壁面後退による歩行空間の確保、まちづくりに貢献する民間事業者への事業費支援策を検討。駅西側ルート沿線は利便性向上施設や居住の誘導を促進する。

 都心部への過度な自動車流入抑制対策では、建築物に備える駐車台数抑制や郊外駐車場の設置を奨励。大通りから駐車場への出入り口の規制や路上の荷さばきのルールづくりに取り組む。民有地の高度利用のほか、公共交通や歩行者に優しいまちづくりへ貢献する。

 駅西側への経済波及効果はLRT沿線開発への建設投資が約810億円。駅東側の6階以上の高層建築物増加が駅西側でも同様と仮定し、10年間で約20棟(1棟当たり約10億円)の発生を見込んだ。直接的効果が約530億円、1~2次効果が各140億円。

 優先整備は駅東口~芳賀・高根沢工業団地間。18年6月に着工し、停留場19カ所(市15カ所、町4カ所)、他の交通手段から乗り換えるトランジットセンター5カ所(市4カ所、町1カ所)を整備する。駅東側ルートの全線開業は23年8月となる。

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