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栃木県小山市

小山市蛇祭り伝承館、来年度に基本・実施設計、建設候補地6600平方m、24年度着工へ

2022/11/09 栃木建設新聞


 小山市教育委員会は8日、間々田のじゃがまいた伝承館建設候補地を農地6638平方m(間々田)に選定したことを市議会に報告した。奉納会場となる間々田八幡宮近くに専用会館を建設する。関東有数の奇祭ながら、知名度不足の国指定重要無形文化財を広く周知する。2023年度は基本・実施設計委託と用地を取得。24~25年度で建設工事、展示工事、外構工事を進めていく。

 間々田のじゃがまいた(蛇祭り)は、端午の節句に間々田八幡宮境内を主会場に開催される。19年3月28日、国の重要無形民俗文化財に指定された。年1回の観覧にとどまるため、先進地では文化遺産振興に通年展示専用会館を持つのが一般的。

 建設候補地は間々田八幡宮に近く国道4号からの良好なアクセス性、大型バスの進入の支障がない場所を条件に検討。市課長級で構成する「整備検討委員会幹事会」、市部長級の「整備検討委員会」、地元や有識者による「整備検討懇話会」の同意を取り付けた。

 20年度の基本構想策定、21~22年度の基本計画策定はトータルメディア開発研究所が担当。伝統行事を次世代につなぐ多世代交流拠点を建設し、一層の文化財保護や啓発活動を推進。潜在的な観光資源を磨き上げ、市南部地域玄関口の振興につなげる。

 伝承館は魅力を発信し、深く知る機会を提供。伝統行事の意義を正しく伝え、各町内の蛇制作技術を次世代に引き継ぐ。じゃがまいたの変遷を確認できるよう歴史を記録に残す。将来の担い手が歴史や文化の特性を理解し、技術や文化を支える人材を育成する。

 基本機能は①伝承・教育普及②展示③広報-の3つ。制作技術を体系的に収集・整理・保存・記録。親しみやすく分かりやすい展示ストーリーや構成。制作技術実演や体験を展示と一体化。認知度向上へ市内来訪者の増加に向けた広報活動を展開していく。

 施設構成は展示エリア(常設展示室、映像シアター、体験学習室)、共用エリア(エントランスホール、受付、トイレ、喫茶・土産店)、管理エリア(事務室、会議室、倉庫、休憩室、ボランティア室、機械室)を想定。建設工事と並行し、展示物を制作する。

 7つの町内が竹と稲わらにシダの葉を巻き付けた全長15m、太さ60㌢前後の巨大な蛇を制作。「じゃーがまいた。じゃがまいた」とはやし立てながら弁天池に入水。蛇体入水による雨ごい要素を垣間見ることができ、民間信仰の貴重な資料と国から評価された。

 蛇がとぐろを巻く姿や蛇が参った様子を表し、田植え時期を前に五穀豊穣や疫病退散を祈願する。7体は蛇寄せと称して神社へ向かい、蛇揚げといって一体ずつ社殿を駆け上がる。祈祷を受けた後、弁天池で蛇体を練り回しながら水飲みの儀に臨む。

 5月5日の奉納日には新緑薫る境内に春の風物詩目当てに多くの見物客が集まる。しかし催事以外は訪れる人が少なく、年間を通してにぎわう伝承館の在り方を基本計画で導く。子どもから大人までの幅広い世代が活動し、地域固有の伝統文化を未来永劫に伝承する。

 間々田地区は、国道4号やJR宇都宮線に沿って南北に細長く市街地を形成。八幡宮は奈良時代中期の創建とされ、境内の一部に立地する間々田八幡公園(3ha)は再整備事業中。公園施設の老朽化や繁茂樹による暗がりを解消し、快適な市民の憩いの場に転換する。

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