記事

事業者
茨城県港湾課

耐震性係留施設整備へ/鹿島港の長期整備計画案

2005/12/27 日本工業経済新聞(茨城版)

 県土木部港湾課は、鹿島港について、おおむね10年後から15年後を目標とする長期的整備構想(港湾計画)の策定を進めている。このほど整備計画案をまとめ、公開した。案によると、今後の整備方向について<1>安全で使いやすい港として「耐震性が確保された係留施設の整備、埠頭用地や港湾関連用地の整備」<2>海洋性レクリエーション空間の創出として「レクリエーションエリアの確保、プレジャーボートを収容する拠点施設の整備」<3>複合的な産業空間の創出として「高付加価値製品の研究・開発・生産を一貫して行える企業の誘致、立地特性を活かした産業の立地促進」-などを挙げている。

 県では、整備方向案をホームページなどで公開しており、案に対する意見を募る。また、港湾関係者などで組織している鹿島港長期構想検討委員会での意見なども踏まえながら、来年度に港湾計画を策定する予定。

 鹿島港は、昭和30年代に始まった鹿島開発の中心として建設が開始され、日本有数のコンビナート地帯である鹿島臨海工業地帯とともに発展を続けている。

 現在までに、住友金属工業をはじめ、鉄鋼、金属関連、石油化学コンビナート関連、飼肥料関連など合計177社が立地する一大産業拠点となっている。

 また、道路アクセスも優れ、平坦な地形で自然災害が少なく、Jリーグ鹿島アントラーズのホームタウンとしても有名、などのメリットもある。

 一方で、これからの鹿島港は、鹿島臨海工業地帯の着実な発展を支えながら、市民生活を豊かにするなど、さまざまな役割が求められている。

 そこで県では、港湾法に基づき、おおむね10年後から15年度を目標とする「港湾計画」を作成することにした。

 今年9月には、地元企業などの鹿島港湾関係者、学識経験者、国、県、鹿嶋市、神栖市で構成する「鹿島港長期構想検討委員会」を設立。将来像について検討に着手した。

 引き続き、「鹿島港の現状と長期的な整備方向(案)」を作成。案を公開し、県民などから意見を聞く「パブリックコメント」を進めている。

 案では、鹿島港の位置づけとして<1>周辺企業の国際競争力の強化に貢献する<2>工業港としての機能を確保する<3>商港としての機能を向上させる<4>安全で使いやすい港湾機能を提供する<5>震災発生時の緊急物資輸送の拠点とする<6>海洋性レクリエーションなど地域の生活空間としての利用を促進する-を提示。

 具体的な整備事項としては、「耐震性が確保された係留施設の整備、埠頭用地や港湾関連用地の整備」「海洋性レクリエーションエリアの確保、プレジャーボートを収容する拠点施設の整備」「高付加価値製品の研究・開発・生産を一貫して行える企業の誘致、立地特性を活かした産業の立地促進」などを挙げている。

 パブリックコメントは来月まで行い、意見などを検討委員会に諮るなどして、来年度に港湾計画を策定する予定だ。

 鹿島港の長期的な整備方向(案)は次のとおり。

◆安全で使いやすい港

 鹿島港を利用する船舶が、安全で、安心した入出港や荷役作業を実現できるようにするため、漂砂対策、長周期波(副振動)対策を実施する。

 災害時の緊急支援物資や人の輸送、他の岸壁の代替として利用できる耐震性が確保された係留施設の整備を実施するとともに、防災拠点として必要となる広場として利用できる埠頭用地(荷捌き地)や港湾関連用地(野積場等)の整備を実施する。

◆複合的な産業空間の創出

 鹿島経済特区のメリットを活用し、工業地帯の活性化を促進するため、鹿島臨海工業地帯に高付加価値製品の研究・開発・生産を一貫して行える企業や機能の誘致を進める。

 鹿島臨海工業地帯は外洋に面しており、風力や波力などの自然エネルギーが豊かなことから、立地特性を活かした産業の立地を促進する。

 地域の良好な環境を保全するとともに、長期的な首都圏の環境問題を解決するための方策を検討する。

 漁業活動に配慮した施設配置により、地域における水産業の活性化を促進する。

◆地域の物流機能の向上

 地域の物流を担う鹿島港を利用した国内および国外各地を結ぶ物流ルートを検討する。

 マルチモーダルの観点から、港湾からの内陸部への輸送手段として、鉄道等の多様な代替輸送モードの可能性を検討する。

◆海洋性レクリエーション空間の創出

 鹿島港周辺の貴重な動植物を保護するエリアを設けるとともに、自然環境を享受できるような親水空間としての緑地等の施設整備を促進する。

 海浜空間を活用した海洋性レクリエーションエリアを確保するとともに、増大するプレジャーボートを収容する拠点施設の整備を実施する。



紙媒体での情報収集をご希望の方は
建設新聞を御覧ください。

建設新聞はこちら