県建設業協会長野支部(飯島泰臣支部長)は5日、県現地機関との意見交換会を長野市のホテルメトロポリタン長野で開催した。支部は設計成果の品質向上や、適切な設計変更の対応、総合評価落札方式における現場代理人・担当技術者の評価などを求めた。
会合には県から長野建設事務所の吉川達也所長をはじめ、浅川改良事務所の川住淳一郎所長、裾花ダム管理事務所の足立修所長、千曲川流域下水道事務所の松林孝文所長、川中島水道管理事務所や長野地域振興局農地整備、林務両課および北信会計センターの職員計16人が出席。支部側は40人が参加した。
冒頭、飯島支部長は「県の皆さんには県民の大切な命と財産を守るため尽力されていることに感謝申し上げる。われわれも皆さんのパートナーとして、県民の負託に応えるべく頑張っている。ただ、資材価格の高騰や人材不足など、取り巻く環境は厳しい。これまでも耳を傾けていただいていることは重々承知しているが、こうした機会に顔を合わせて話すことは非常に大事なこと。充実した意見交換会になることを期待している」とあいさつ。
吉川所長は日頃の県政への協力に感謝を述べた上で、「建設部では強靱化5か年加速化対策により、流域治水、道路ネットワークの機能強化、集中的なインフラの老朽化対策などを重点的に実施している。長野建設事務所では、ことし1月補正で38億円の予算が配分され、おかげさまで6月までに公告するという目標を達成できた。また現在、県議会11月定例会において本年度の補正予算が審議されている。可決されると昨年以上の配分がある予定。国民の安全・安心のため円滑な執行が求められており、昨年よりかなり前倒して発注作業を進める。ぜひ、不調・不落のないよう協力をお願いしたい」と求めた。
議事では各現地機関が今後の発注見通しを説明。その後、意見交換に移った。設計成果に関して支部は「現場条件と一致しない内容で積算されているものが多々ある」とし、現場条件や施工方法に見合った歩掛の採用と数量算出の徹底や、発注時に設計を照査することを要望。施工段階で不備が判明した場合には、適切な設計変更を行うとともに、内容によっては設計者を含めた三者会議を開催することも求めた。
県側は「現場の全てを捉えきれない現状もある。標準歩掛が定められている場合はこれを使用することが基本だが、適用範囲外の場合は見積もりを活用している。今後は、より現場を精査し、現場に適応した歩掛や単価で積算するよう努める」と回答。
支部が「入札時に質問事項がない内容は設計変更の対象とはしないと言われたケースがあった」と伝えると、「質問事項がない内容であっても協議の上、変更はもちろん可能。また、三者会議は当初設計から計画することを原則としているが、施工中において必要が認められる場合は対象工事にできる。発注者と協議してほしい」と答えた。
さらに支部は、災害復旧工事の発注が本格化する中、「災害復旧は設計変更してもらえないのではとの懸念がある。受注に二の足を踏む企業が増えれば、不調・不落につながる」と対応を質し、県は「国への届けが必要になるが、変更することは可能。必要に応じて協議してほしい」と述べた。
総合評価における現場代理人等の評価については、支部が「若手育成につながる。国では評価している」と訴え、県は現行の技術者評価の運用を説明した上で「要望は技術管理室に伝える」と答えた。
また支部は「11月から電子契約が導入されたが、契約保証や建設副産物の手続きがタイトになると考えられる」とし、現行は落札決定の翌日から7日以内としている契約締結期限を、国と同様に休日を除いた日数とするよう要望。県側も理解を示し「技術管理室へ伝える」と約束した。
このほか支部からは「プレキャスト製品の積極的な活用」「出来形管理の測点数が10点未満の工事の評価の改善」「小規模工種に含まれない『護岸』等において、打設量が少ない場合のコンクリート圧縮強度試験の頻度の緩和」などの要望が上がった。
意見交換の中では吉川所長が「具体的な事例を教えてもらえば、対応しやすいし、より議論が深まるのではないか」と提起する場面もあった。
終わりに小山田雄治副支部長は「丁寧な説明をいただき、また声に耳を傾けていただき感謝申し上げる。業界はコスト高、技能者や若手不足、DXの推進など、さまざまな問題を抱えている。発注者と受注者が共に手を取り合い、意見を交換しながら少しでも解決に向かえればと思う。また、災害復旧はわれわれしか成しえない。できる限り設計変更もみてもらえるということなので、会員の皆さんにも不調・不落のないよう協力をお願いします」と締め括った。