群馬県建設業協会(青柳剛会長)は9月に国土交通省直轄工事の採算性、11月に公共工事書類作成についてそれぞれアンケート調査を実施、集計結果を公表した。今回まとめた調査結果に加え、9月に行われた「2024年問題」アンケートの結果を受け青柳会長は「具体的な方策を示す時期」とし、技術者のワークフローを踏まえ、新たな仕組みとして「書類作成工期」を受注者側の選択制で導入することを協会として提案した。(11月に行われたアンケート結果は3面に掲載)
2024年4月から建設業にも適用する労働時間の上限規制、いわゆる2024年問題へ対して青柳会長は「具体的な方策を提言しながら外に向かって話をし、解決方法の答えを出す時期」と考えを示すと、年度内に行った3つのアンケート結果を踏まえ「現場担当技術者の長時間労働の原因は書類の作成業務。その書類作成業務を別扱いとして考えない限り、労働時間問題に対する答えは出ない」とし、中小企業建設業者における技術者のワークフローを踏まえた柔軟な工期設定として「書類作成工期」を受注者側の選択制で導入することを提案した。24年4月から始まる労働時間の上限規制施行を視野に今後、書類作成工期の設定などを国や県に訴えていくとしている。
9月に行った国土交通省直轄工事の採算性に関するアンケートでは、書類の簡素化、検査体制の効率化について、「明らかに軽減されている」が20%(前回調査比8ポイント増)、「軽減をある程度実感できる」との回答が80%(同16ポイント増)となった。協会では、21年9月に発表した関東地方整備局の土木工事電子書類スリム化ガイドの効果が大きかったと分析。書類の簡素化が導入された15年度から大幅に改善された状況が数字として現れた形となる。一方で、書類の簡素化はここまでと見る声が多い。
11月に実施したアンケートは「2024年問題」について行ったもので本年度2回目となる。協会本部会員で回答した226社のうち、19年度から21年度までの3年間で、受注し完成した公共工事の実績がある223社の回答を基に集計している。
アンケートでは現場を担当する技術者のワークフローの実態として、公共工事の工事書類作成に関して調査を実施した。アンケートの回答によると主に県の工事を担当する技術者が5割以上、市町村工事で約4割となっていることから、県や市町村工事に業務が集中していることが分かる。そのため、県や市町村の工事を担当する技術者の時間外労働の削減が重要だと言える。
一方で、「公共工事を担当する技術者の年間時間外勤務の平均値」の質問では、主に国の工事を担当している技術者が383・9時間と最も多い。最大値は680時間。県および市町村の工事を主としている技術者の平均値が250時間前後となっており、国工事の時間外労働時間が大きく上回っている結果となった。
工事書類に関する主な課題の問いでは、「書類の多さ」の回答が最大となり、次いで「書類作成の時間が足りない」が大きい数字。「書類の作成は時間外勤務で行っているか」の質問には8割以上「行っている」としており、時間外勤務での書類作成が大半を占めている。
書類作成期間として工期設定を新たに盛り込むことに関しては、「良いと思う」が53・9%となった一方、「どちらともいえない」が37・4%にのぼった。「書類作成期間を工期設定に盛り込んだ場合に懸念されること」の問いでは、「生産性、収益性が逆に低下するのでは」、「工期が伸びる事で技術者が縛られ、次の工事の受注に影響するのでは」、「実際には施工に必要な工期として使用してしまう」という3つの選択肢に対して、ほぼ同程度の割合で回答が得られた。協会は、これらの懸念事項が解決できれば、書類作成期間を工期設定に盛り込む事は有効的な手段だと考えている。