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成田国際空港(株)

指名を廃止、公募型へ/価格交渉方式も改善/一部で事前公表

2006/01/06 日本工業経済新聞(茨城版)

 成田国際空港(株)は、工事発注をめぐる不祥事の再発防止のため「工事発注事務の適正化策」を策定した。そのうち「契約方式の改善」では、今年4月から実施する施策として<1>指名競争入札を廃止し、公募型指名競争に移行する<2>契約制限価格の事前公表を一部で導入する<3>価格交渉方式の改善策として「応募企業全社に対し、詳細見積書の提出を求める」「契約制限価格の算定方法を、より市場価格を反映できるよう変更する」「価格交渉は見積額の低い3社と行うことを徹底する」「価格交渉の対象となった企業名を事後に公表する」-を行う。

 成田国際空港(株)では、発注した受変電設備工事に関して不祥事があったことを受け、外部有識者による「工事発注不正防止委員会」を設置し、工事発注不正防止に関する提言を受けた。

 提言を受けて「工事発注事務の適正化策」を決定し、速やかに実行に移し、工事発注の一層の公正性、透明性、競争性の向上に努めていく。

 工事発注事務適正化策のポイントは次のとおり。

【コンプライアンス教育の強化】

 全役員社員を対象とするコンプライアンス教育を大幅に強化し、早急にそのためのプログラムを策定する。

 新入社員の入社教育カリキュラムの策定にあたり、本件を最重要項目の一つに位置付ける。

【契約方式の改善】

 <1>指名競争契約の廃止

 2006年4月から指名競争契約を廃止し公募型競争契約に移行する。

 <2>総合評価方式の拡大

 公募型競争契約の対象事案について総合評価方式を拡大し、3年後に金額ベースで5割に達することを目標とする。

 <3>契約制限価格の事前公表制の導入

 2006年4月から、契約制限価格の事前公表制を、価格交渉方式の対象事案の一部について試行し、その結果を評価した上でこの制度を導入する。

 <4>価格交渉方式の改善

 2006年4月から、現行の価格交渉方式を次のとおり改善する。

 ・応募企業全社に対し、詳細見積書の提出を求める。

 ・契約制限価格の算定方法を、より市場価格を反映できるよう変更する。

 ・価格交渉は、見積額の低い3社と行うことを徹底する。

 ・価格交渉の対象企業名を事後に公表する。

 <5>マニュアルの整備

 現行制度を大幅に変更するため、採用する基準、参加条件等を含む所要のマニュアルを整備し原則として公表する。

【内部統制の強化と業務執行の改善】

 <1>内部統制組織の強化

 2006年4月から、競争契約監視委員会の機能を実質的に拡充するため、事務局を財務部から業務監理部に移し、体制の強化を図る。

 <2>調達室の設置

 2006年4月から、工事発注業務のうち積算の審査及び価格交渉の両業務を、発注部門から新たに設ける調達室(仮称)へ移行する。

 <3>談合対応マニュアルの整備

 談合疑義案件情報が寄せられた際などに具体的かつ即応性のある対応ができるよう、談合対応マニュアルを整備する。

 <4>情報窓口の整備

 社内からの談合情報の収集を促すため、社員に対しグリーンラインの利用方法の周知を図る。社外からの情報を受け付ける窓口を新設する。

 <5>受注企業との接触のあり方

 競争契約により工事を受注する企業との接触のあり方についてルールを作る。ルールには、企業との応接・交渉は複数で対応すること、それぞれが記録を作成して上司に報告すること、一定期間保存することを含む。

 <6>情報管理の徹底

 公表前の契約情報について、電子情報はセキュリティの向上、文書情報は鍵つきキャビネットでの保管等により情報管理を徹底する。

 <7>発注・契約部門での長期在任の排除

 発注・契約部門での同一グループ3年、同一部5年の在任期間制限ルールの徹底を図る。

【情報の公開】

 「公共工事の入札及び契約の適正化に関する法律」が公開を求めている情報は、空港の秩序の維持などのため秘匿せざるを得ない格段の事情がある場合を除き、すべて公表し、方法は原則、ホームページで行う。

【再就職のあり方】

 <1>受注企業への再就職

 役員経験者は無期限、管理職経験者は離職後5年間、競争契約により工事を受注する企業へは再就職しない。

 ただし、本人の知識や技術の活用が可能で、受注企業の競争契約に携わらないことが明白な部門への再就職は、その旨及びその後も競争契約に携わらない旨を当社と本人、当社と受注企業との間で確認し、人事評価委員会を改組した人事委員会に諮った上で認めることができるとする。その場合、再就職先の企業名及び再就職者の最終役職等はその都度公表する。

 <2>雇用期間の実質的延長

 2006年4月から段階的に、社員の知識、技能、経験等を退職後も活用する制度を拡充し、雇用期間の実質的延長を図る。

【受注企業への対応】

 <1>協定の締結

 競争参加資格の要件として受注企業に対し協定の締結を求める。それまでの間は競争契約の見積もり提出時に誓約書の提出を求める。内容は、談合関係法令に違反しないこと、違反事実を知ったときは当社に届けること、正当な理由なく頻繁に当社に働きかけをしないこと、これらに反したときは不利益を講じられても異議がないこと等を定める。

 <2>窓口となる者の特定

 各受注企業において当社との接触の窓口となる者をあらかじめ特定し、当社と発注、契約の打ち合わせ、交渉を行うときは必ず当該者が同席するものとする。

 <3>取引停止措置の強化

 国の指名停止措置に準じ、談合行為などの悪質性が際立っている場合には現行の取引停止期間を2倍に延長し、最大24月とする。

 <4>違約金特約条項の設定

 談合によって受注したことが事後に判明した場合は、契約金の10%を違約金として徴収する旨の特約条項を契約の中に設けておく。特に悪質性が際立っている事案は15%まで違約金額をあげることができるよう措置しておく。



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