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栃木県宇都宮市

宇都宮市の大規模盛土造成宅地滑動崩落対策、概算工費に23億円、地山補強土工で秋頃着手、鶴田2年、叶谷

2023/03/11 栃木建設新聞

 宇都宮市は2023年度から叶谷、横山、鶴田地区の大規模盛土造成宅地の滑動崩落対策工事を着工する。都市計画課によると、3地区の合計工事費は約23億円。工法は経済性、維持管理などの観点から地山補強土工を採用した。当初予算案には工事費5億1700万円を計上したほか、地区ごとに債務負担行為を設定。着工時期は雨季を避け、9月議会承認後の秋頃を見込んでいる。整備完了は鶴田地区が24年度、叶谷と横山地区は25年度を目指す。

 当初予算案に計上した工事費の内訳は、叶谷地区約2億1000万円、横山地区約1億8000万円、鶴田地区約1億1000万円。

 債務負担行為限度額は叶谷地区が10億5500万円(24~25年度)。横山地区は7億100万円(24~25年度)。鶴田地区は4500万円(24年度)。

 対象3地区の造成宅地防災区域の面積は叶谷地区が約2・6ha、横山地区約1・5ha、鶴田地区約1ha。区域内の盛土面積は叶谷地区約1・6ha、横山地区約0・8ha、鶴田地区約0・3ha。いずれも民間造成地で盛土面積3000平方m以上の谷埋め型大規模盛土造成地。

 区域内の建物立地戸数は叶谷地区が50戸、横山地区30戸、鶴田地区20戸。いずれも地盤強度が低く、震度5弱相当の揺れで崩壊するリスクがあると診断されている。

 採用された地山補強土工は、盛土の滑りが見込まれる箇所に鉄筋などを打設し、地山のゆるみやひずみを抑制することにより斜面を安定させる工法。

 工事延長は叶谷地区が100m、横山地区70m、鶴田地区50m。打設する鉄筋数は叶谷地区約700本、横山地区約450本、鶴田地区約250本。補強材の根入れ深さはいずれも1m以上。穿孔径や芯材径、1組の補強材本数、配置間隔は各地区の地山に合わせた数量とする。

 横山地区は地下水が高い位置にあるため、集水井工を実施。盛土の下流にある水路に1次放流し準用河川一侍川に放流する。

 市ではこれまで、17年度に第1次スクリーニング調査を実施。84カ所の大規模盛土造成地を抽出し19年度に市民に周知するマップを公表。並行して18~20年度にかけ現地踏査し15カ所まで絞り込んだ。

 さらに、15カ所で簡易地質調査や簡易安定計算を行い、より詳細な調査が必要で危険性のある盛土3カ所を抽出。21年度に物理探査や地質調査、安定計算などを実施。22年1月中旬に調査結果を地域住民に報告。22年3月に区域指定・防止工事の内容を説明し、各自治会から要望書が提出された。

 22年7月に各地区の詳細設計業務をコンサルに委託。叶谷地区と鶴田地区が応用地質、横山地区はエイト日本技術開発が担当。3月中に詳細を固め、工事に関する地元説明会を開催する予定。住民の安全確保を図るため、理解を得たうえで早急に工事準備を進めていく。

 また、今回対策箇所以外の第2次スクリーニング調査抽出12カ所の経過観察(モニタリング)も継続。年1回の目視点検などを実施し改めて2次調査の必要性を検討する。

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