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田村央県土木部長インタビュー

2023/05/16 日本工業経済新聞(茨城版)

 2023年度に入り、国の「防災・減災、国土強靱化5か年加速化対策」が最盛期を迎え、県土木部の役割はますます大きくなっている。田村央県土木部長に本年度の抱負と展望を聞いた。田村部長は「令和元年東日本台風からの復旧・復興を最優先に、国等と連携しながら那珂川・久慈川緊急治水対策プロジェクトを着実に進める。時代の変化に対応しつつ、効果的かつ効率的な社会資本整備を通じて、県勢発展に全力で取り組んでいきたい」と抱負を語った。


新年度インタビュー

―2023年度における目玉事業や新規事業は

 県総合計画の基本理念である「活力があり、県民が日本一幸せな県」の実現に向け、「災害・危機に強い県」と「活力を生むインフラと住み続けたくなるまち」づくりにスピード感を持っていきたい。

 「災害・危機に強い県」づくりについては、令和元年東日本台風からの復旧・復興を最優先に、国等と連携しながら那珂川・久慈川緊急治水対策プロジェクトを着実に進める。あわせて、治山治水対策や公共施設の耐震化、長寿命化などのハード対策を推進するとともに、県民の防災意識の醸成や水害リスク情報の提供など、ソフト対策にも取り組み、県民の皆様の安心安全の確保に全力で取り組む。

 「活力を生むインフラと住み続けたくなるまち」づくりについては、首都圏中央連絡自動車道の4車線化や東関東自動車道水戸線の整備促進、スマートインターチェンジの設置促進、茨城港及び鹿島港の港湾機能強化、カーボンニュートラルへの対応などに取り組み、陸・海・空の広域交通ネットワークの充実を図る。

 特に圏央道の4車線化及び東関道水戸線の整備については、いずれも令和8年度までに全線開通の見込みが国土交通省から示される中、3月31日には圏央道の境古河IC~坂東ICまでの区間が開通するなど、事業の最盛期を迎える。県としても最大限協力しながら、事業の進捗を促進していきたい。また、県では、道路の冠水対策や橋梁の耐震化などによる緊急輸送道路ネットワーク整備、河川改修、港湾の高潮対策などの取り組みを、防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策予算を活用しつつ進めていく。


―ICT活用工事やDXなど、デジタル化への取り組みについて

 ドローンやレーザー技術を活用した3次元測量、ICT建設機械による施工の半自動化導入など生産性の向上としてより少ない人員・時間で工事を行うICT施工の導入支援など、ICT技術を活用したインフラ分野のDXを推進している。

 ICT技術の活用では、チャレンジいばらき簡単活用型といったICT施工に比較的取組みやすい独自の発注方式を新設するなど、対象となる工種や工事の拡大を図っているところ。また、22年度からは情報共有システムを土木部の全ての発注工事で対象としているが、23年度からは遠隔臨場についても同様に全工事を対象とし、全ての工事でICTのいずれかの活用が行われることになる。

 電子契約・電子納品については、21年度に導入した立会人型電子契約利用を推進するとともに、今後は電子納品の拡大も進めていきたいと考えており、施工手続きの効率化にも積極的に取り組んでいく。

 また、県の取り組みを市町村へ展開し、建設業の働き方改革を推進していきたい。まずは、規模が大きい市町村から始めてもらい、全ての市町村に広げられるよう努めていきたい。


―2024年問題まであと1年、担い手確保・育成や労働災害の防止、働き方改革について

 建設業の担い手の確保・育成についてですが、2024年問題とされる建設業における時間外労働の罰則付き上限規制については、来年4月の適用まで1年を切り、待ったなしの状況となってきている。今回の県の入札参加資格審査においては、この2024年問題にいち早く取り組んでいる建設企業を評価するため、新たに社会保険労務士による労働条件審査を評価項目として設けたところであるが、「労働時間の適正な把握」に関する指摘が最も多かった結果となっており、社会保険労務士会からは、建設企業の魅力度を上げ、優秀な人材を確保するために、業界全体の取組が望まれるとのコメントもあった。喫緊の課題である2024年問題を含め、建設業における働き方改革について、この1年しっかりと取り組んでいきたいと考えている。

 また、建設業の働き方改革の実現のためには、適正な予定価格の設定と工期の設定が非常に重要な課題。まず、適正な予定価格の設定については、23年度の公共工事労務単価を、実勢賃金の上昇を反映して前年度から6・4%引き上げたところであり、資材単価についても市場取引価格の変動を随時、速やかに反映していく。

 次に、適正な工期設定については、建設現場で働く方々が計画的に休暇を確保できるよう、週休2日制促進工事を一層推進。23年度からは3000万円以上の工事で原則義務付けるとともに、現場条件に柔軟に対応できるよう、4週8休制も選択できる運用としている。また、余裕期間制度やゼロ県債の活用による施工時期の平準化を推進し、長時間労働の是正に努める。

 業界が抱えるさまざまな課題に適切に対応し、生産性の向上や就労環境の改善に向け、ICT活用促進工事や遠隔臨場、情報共有システムの活用を更に積極的に進めるほか、電子契約、電子納品、工事全般における書類の簡素化などのインフラ分野のDXの推進に取り組む。

 今年度も、公共工事の円滑な施工を確保するとともに、地域建設業の持続可能な発展を支えていくため、積極的に事業を進めていきたい。


―建設業者へのメッセージ

 建設業者の皆さまには、日ごろより「地域の守り手」として、災害時の対応をはじめ、地域インフラの整備や維持管理に尽力いただくとともに、昨年度においては、鳥インフルエンザ及び豚熱発生の際には、建設業界の多くの方々に防疫作業にご協力をいただき、お礼を申し上げたい。

 県土づくりを進めていく上で、インフラの適正な維持管理や、頻発化・激甚化する災害への対応など多岐にわたる課題や要請に応えるためには、地域に精通した地元建設業者や測量設計コンサルタントをはじめとした建設業界の皆様の技術力が必要不可欠であり、従来以上に役割が期待される。地元建設業界における担い手の確保・育成が大変重要となることから、適正な予定価格の設定や週休二日制の導入促進、施工時期の平準化、ICT施工の普及・拡大、書類の簡素化など、就労環境の改善や生産性向上に資する取り組みを通して、建設業界における働き方改革の支援にも積極的に取り組んでいく。

 今後とも時代の変化に対応しつつ、効果的かつ効率的な社会資本整備を通じて、県政の発展に全力で取り組んでいきたいと考えているので、より一層のご理解とご協力をお願いしたい。

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