4月1日付で就任した県の目良聡産業労働部長が埼玉建設新聞のインタビューに答え、環境面などさまざまな社会課題への対応と経済活動の両立に向けた同部の運営方針を強調した。事業者間の取引における適切な価格転嫁や、共存・共栄を図る機運を一段と育むため、必要な補正予算案を積極的に編成する考えなどを明かした。
資源・製品価値の最大化、資源消費の最小化、廃棄物の発生抑止などを目指すサーキュラーエコノミー(循環経済)の要請を巡っては、産業労働と環境の両部が中心となり、取り組みを加速させている。産業労働部副部長から環境部長を経て、産業労働部長として戻ってきた人事の背景には、こうした連携体制の深度化が狙いの一つ。
「廃棄物をできるだけ出さずに循環させる。それでいて稼げる仕組みの支援が同部での使命。サプライチェーン全体がSDGs、カーボンニュートラルなどの変化にも対応しなければならない。それは建設業界も同じだ」と指摘。発注行政とは別の立場から、建設業の一層の飛躍に期待を寄せた。
国のパートナーシップ構築宣言に登録する県内企業数が着実に増加している。同部の集計によると、県内建設業における宣言率は、8日時点で全国平均8・9%(2187社/2万4634社)を上回る、17・4%(187社/1073社)に達する。
「そもそもコロナ禍において、産官学金労の戦略会議を独自に創設していた下地が、適正な価格転嫁などを盟約とするパートナーシップ構築宣言の登録の後押しにもつながった。この埼玉モデルは高い評価を受けている」と話す。さらなる機運醸成のための補正予算を検討中だ。
エネルギーや原材料、資材、人件費などの価格動向も不透明なことから、支援に結び付く補正予算なども検討する考え。
主要な公共事業では、鶴ヶ島市内の農業大学校跡地周辺に整備する「SAITAMAロボティクスセンター」の進行が目玉。県内中小企業らのロボット産業参入を促す研究開発の新拠点となる。「実施設計を本年度行い、24年度以降の着工、26年度の開所を目指す」と行程案を説明した。
同センターの開所に先行して、中小企業らとのコンソーシアム(連携協力体制)を結成する。「規約の策定を進めており、月末か6月には参画企業の募集を開始したい」と見通しを語った。
調査段階にある「北部地域振興交流拠点」については、これまでの調査結果、有識者による検討委員会の提言などを踏まえ「具体的な産業振興施策の検討に力を入れる」とした。
【略歴】 めら・さとし 1987年3月早稲田大学法学部卒、同4月県入庁。企画財政部川越比企地域振興センター所長、産業労働部副部長、環境部長を経て4月から現職。川口市出身、58歳。職員には前例踏襲で止まらず、一般の感覚から自分の頭で考え抜く姿勢の大切さを呼び掛けている