国土交通省は新規採択時の公共事業評価制度で、さらなる改善に向けて動き出した。25日には2020年度以来となる公共事業評価手法研究委員会を開催、費用対効果算出で使う社会的割引率4%の妥当性や費用便益では表れない貨幣換算が困難な効果の評価など、論点を示し意見を求めた。夏ごろを予定する次回委員会で改善の方向性などを議論する。
社会的割引率とは、時間軸上の価値を補正するもので、同じ財に対しての現在と将来との価値の換算比率。04年の技術指針で、国債(10年もの)の実質利回りなど参考に全事業において当面4%を適用するとされて以来、変動はない。
論点として示したのは、設定当時と比較して近年は金利が低水準で推移していることや、学術的には社会的時間選好による設定手法もあるなどの状況から、妥当なのか再検討につながった。
なお、4%適用の妥当性については、これまでも議論され20年度の委員会でも「比較の意味で4%の算定は残る必要がある」「時代にそぐわない、下げるべき」などの意見があった。
事業評価は、費用対効果分析を含めて総合的に行っている。費用対効果分析は、貨幣換算できる費用便益分析と貨幣換算が困難な効果を含めて行っている。特に、安全・安心や防災などの効果は貨幣換算が困難であり、便益に含まれない効果も多く存在している。論点として、より幅広く貨幣換算が困難な効果を考慮した評価を実施すべきではないか、とした。
貨幣換算が困難な効果としては、新幹線整備による駅周辺の地価上昇、観光客の増加、企業立地促進・雇用創出・定住促進など広域にわたり多くの効果をもたらしている。ほかにも道路整備における企業立地・物流支援、災害時の道路代替機能など。国営公園整備での歴史・文化の保全・継承への貢献など、効果は計り知れない。さらに、官庁営繕事業や巡視船艇整備事業は、費用便益分析に依らない観点などから評価している。