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橋梁老朽化対策に遅れ/急がれる市町村橋梁補修/修繕措置着手率の向上を

2023/06/20 新潟建設新聞

 インフラメンテナンスへの国民的な関心が高まる中、新潟県内における道路施設の老朽化対策が遅れている。5年に1度の頻度で行う道路施設の定期点検の2巡目点検の結果、新潟市を除く県内市町村の点検実施率は、2022年3月末の時点で橋梁が54%、トンネルが31%、道路附属物等が37%となり、いずれも全国平均を下回る。このうち橋梁に関して、点検を実施した6751橋の判定区分の内訳は健全(判定区分Ⅰ)が34%、予防保全段階(同Ⅱ)が48%、早期措置段階(同Ⅲ)が18%、緊急措置段階(同Ⅳ)が0・2%となり、早期措置段階と判定された橋梁の割合は全国平均の7%と比べて著しく高い=表参照=。本来であれば文字通り早期の措置が必要だが、修繕等措置の実施状況は、県と新潟市の措置着手率(設計含む)が29%、措置完了率が8%で、市町村の措置着手率は11%、措置完了率は6%にとどまる。

 修繕等措置の実施状況は市町村によって対応に温度差が見られ、措置着手率が5割を超えているのは十日町市の87%と津南町の56%のみで、0%が4市村ある。県土木部道路建設課では「メンテナンスに対する考え方、取り組み方の意識が市町村により大きく異なる」と話す。予防保全へと移行した橋梁の割合が低いことも新潟県の特徴で、0%という結果が出ている。道路施設の老朽化対策が進まない理由について市町村からは「修繕予算が限られている」「技術職員が少ない」「管理橋梁が多い(特に小規模橋梁)」といった声が目立つ。

 この打開策の一つとして期待されているのが「小規模橋梁簡易補修工法判定資料(案)」の活用だ。新潟県構造物維持補修技術協会が監修協力し、県道路建設課、新潟県建設技術センターが市町村向けに昨年度作成したもので、特に数が多い橋長14・5m未満のコンクリート橋の補修を効率的に進めるための手引き書となる。補修方法が「断面修復工」(左官工法)または「ひび割れ補修工」(注入工法・充填工法)で健全度の回復が見込まれるなど、発注者が補修工法を判定しやすいように選定フローを提示し、損傷原因を十分に把握した上での供用期間を見据えた計画立案を支援する。県では講習会を通じて説明を行っており、同協会も本年度から県内市町村を直接訪問し、活用に理解を求めている。現状では予算の関係から小規模橋梁の修繕は後回しにされる傾向にあるが、ノウハウを必要とし、民間の支援を活用したいと考える市町村は多い。

 14日に成立した改正国土強靱化基本法では、政府が国土強靱化実施中期計画を策定、実行することを法律で規定した。従来、補正予算で措置されていた財源が当初予算に盛り込まれることになれば、地方自治体でも中長期的かつ明確な見通しの下で必要な対策を着実に進められるようになる。最近は各地で地震が頻発している。点検結果に基づき措置が必要とされた橋梁は、当然ながら一刻も早い対応が待ったなしだ。効率的な補修につなげるためにも、将来的に必要となる工事に備えた調査・設計は早急に進めておくべきだろう。

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