4月に就任した県西関東連絡道路建設事務所の木村良雄所長が埼玉建設新聞のインタビューで、本体掘削工事が最盛期となっている国道140号のバイパス(BP)「大滝トンネル」の事業見通しなどを説明した。最大土被りの施工区間を過ぎ、発破掘削自体は折り返しに入っている。2025年3月の本体工事完了を目標に、安全で確実な現場管理に気を配る。並行して検討している新路線、長尾根BPは一般部の詳細設計に力を入れる。
――ここまで、トンネル本体の掘削が順調に進んでいる
木村 22年5月13日に掘削を始めてから1年余りが過ぎた。大滝トンネル(秩父市大滝地内)の総延長約2㎞に対し、掘進延長は63%(6月10日時点)を超えてきている。最大土被り約450mの地点も無事に貫通。ここまでは岩盤の状態が比較的良く、トンネル断面を支える支保工が一定のパターンに収まっていることもあり、着工前の想定より順調に工事が進んでいる状況だ。
掘削が終点に向かうにつれ崩落の危険性が高い地帯もあり、また土被りも浅くなっていく。岩盤の変化には細心の注意が必要。着工時から取り組んでいる地山判定委員会により、岩判定の適正化を一層徹底し、確実に安全な形で工事を終えるのが使命だ。
――地域のため、工事の進行状況や整備効果などの情報発信も丁寧に映る
木村 工事情報をホームページ上で毎週更新している。現場事務所内にはインフォメーションセンターを置き、自治体や民間建設業団体などの視察に対応し、事業概要や施工上の工夫などを分かりやすく伝えている。現場は24時間体制。山岳トンネルの工事でありながら、施工者の管理、整理整頓が行き届き、一般が抱くであろう現場イメージとは異なる、とてもきれいな現場だ。
掘削に伴い発生した残土は、トンネル側の別事業である皆野両神荒川線の道路改築工事の盛り土材として有効利用している。
大滝トンネルが開通すれば、落石や岩盤崩落の恐れがある現道を回避しつつ、移動距離も縮まる。大型車両の相互交通も可能になる。本体工事はトンネル掘進が6割以上、覆工コンクリートが1割程度の状況。全ての本体工事の完了後には、トンネル内舗装、照明設備、非常設備、両坑口付近の交差点改良などを仕上げ、できる限り早期の供用開始を目指す。
――大滝トンネルに次ぐ事業区間、皆野秩父BPから秩父公園橋周辺までの「長尾根BP」の検討状況について
木村 22年度から設計に取り組んでいる。設計によりまとまった線形等を地元住民に示し、理解を得られた。皆野秩父BPから山岳部斜面の裾野を回り、秩父ミューズパークの下を抜ける延長約3・8㎞の道路となる。本年度は、一般部の詳細設計を進める。
トンネル想定の区間は、まだ調査段階。地すべり地帯を通過することから、現地踏査、地質調査など詳細に調査を行い、トンネルの施工に問題がないかどうかを慎重に見極める。長尾根トンネルは小鹿野~秩父間を結ぶ新路線となる。期待に応えたい。
【略歴】 きむら・よしお 1986年3月中央工学校卒、県入庁。県土整備部北本県土整備事務所副所長、同秩父県土整備事務所副所長、下水道局荒川左岸北部下水道事務所長を経て4月から現職、58歳。深谷市出身。プライベートは農業で汗も流す