大林組が施工する宝珠山トンネル工事(阿賀野市)では、計画、施工、検査などの各段階に応じたICT技術の導入と検証を進めている。ICT施工で取得できる、さまざまなデータを連携し、現場の管理に活用するとともに、実証を通してノウハウを集め、安全性・生産性の高い未来の施工現場と管理の実現を目指している。
工事を担当する大林組の山中考文工事長は「施工中に取れるデータや、効率的な管理への活用、納品で必要となるデータなど、導入するだけではなくICT技術を導入した結果や効果、課題を未来の施工現場にフィードバックできるように取り組んでいる」とし「受注者だけでなく発注者と一緒に取り組んでいることが、この現場の特徴。それが未来の施工現場を実現するときに重要になっていく」と話した。
現場で活用される主なICT技術として着工前段階に、ドローンにより全線の点群データを取得し、BIM/CIMモデルを作成。基盤データとして活用するほか、日々変わる現場形状には背負い型移動式レーザースキャナを導入し、死角が多い現場内でも装着したまま現場内を歩き回るだけで効率よく現況のデータを取得している。
トンネル工事では、支保工の建て込みやコンクリート吹き付けを切羽から離れたモニター越しに遠隔で操作。ガイダンスシステムによる操作や支保工天端の特殊ジョイントで作業員を切羽から遠ざけ、安全性を確保している。またGNSSや体温、心拍数センサーを内蔵したスマートヘルメットで作業員の位置や心拍数、体温などを管理しており、異常値を検知した場合には管理者が迅速に初期対応に移ることができる。
草水高架橋の橋脚工事では最大10台の定点カメラを設置。施工着手の段階から橋脚工事の進捗状況を画像データとして記録し、後から誰が見ても分かるように残すなどの取り組みを進めている。
同工事は、三川IC~安田IC間5・1㎞の安田工区で、宝珠山トンネルと小松トンネルの2本と草水高架橋、小松上の橋の下部工9基を施工。約13万立方の盛土を行いながら、新潟方面に向かう下り線の工事を進めている。当初契約額は38億1800万円。工期は2025年5月3日まで。
宝珠山トンネルでは5月17日に福島方面からの掘削に着手し、6月26日までに上半部約51mを掘削。草水高架橋の下部工では、P1~P3橋脚が完成したほか、杭の打設が完了。今後、P4橋脚の施工に入り、A1橋台では躯体の鉄筋が進められ、A2橋台は杭頭処理、フーチングの施工を行う。草水高架橋の上部工についても大林組が受注しており、並行して夏ごろにもP1~P3橋脚間の工事に入る見通しだ。
【写真=遠隔操作で支保工建込み、草水高架橋はP1~P3完成】