新潟市は、地下トンネル雨水管整備で6日、掘削機の発進式を執り行った。発進基地は中央区の幸西ポンプ場建設予定地(旧新潟気象台跡地)。地元関係者ら12人が発進ボタンを押すと、防音ハウス内に回転音が響き、モニターにシールドマシンが動く様子が映し出された。
新潟市下水道部東部地域下水道事務所の山口貴史所長は、あいさつで昨今の豪雨災害の激甚化、頻発化に触れ「本市は海抜ゼロメートル地帯が多く、浸水対策は特に重要性が高い。ポンプ施設、雨水バイパス管、雨水貯留施設の整備を進めていくが、これらの浸水対策のスタートとなる重要な工事だ。施工者JVと協力し、安全、円滑に進めていく」と述べた。
施工者を代表し、西松建設北陸支店の富田正浩支店長は「発注者、地域のご理解・ご協力の下、素晴らしいまちづくりのプロジェクトに参加できて光栄に思う。JVの技術・経験を結集し、安全確保に努める」と決意を述べた。
事業は、新潟駅とその周辺市街地にあたる鳥屋野・万代・下所島の3排水区を結ぶ雨水バイパス管と、信濃川に放水する幸西ポンプ場を新設整備するもの。1時間当たり19~33㎜の計画降雨強度を約50㎜に引き上げ、浸水被害の軽減を図る。
このうち第1期工事として主に新潟鳥屋野線の下、約20mの地中をシールドマシンで掘進する。2020年に着手した。既設管からオーバーフローした雨水をポンプ場まで流すバイパス管を造る。管渠の施工延長は2534m、内径は3500㎜。発進立坑は今後特殊人孔として整備する。
掘削の進度は、地下の状況によってばらつきはあるものの、おおむね1日10m前後。掘進しながら中央区鐙西の新潟テクノスクール付近に到達立坑を整備し、到達までは13カ月ほどとなる。
地下深いためGPSは利用できない。知識と経験豊富な技術者が一丸となり、その都度測量を繰り返しながら進める。管渠の曲がり角では、マシン中央部のジョイント部分が関節のような働きをして徐々に向きを変えて掘り進める。前方を掘削しながら、後方では管渠本体を輪切り状にしたPCセグメントを組んでいく。セグメントの1片は約1・7t。6片つなぐと1つの輪のかたちになり、これを繰り返す。技術の進歩で被覆は不要という。さらに排土管を用いて発進基地まで掘った土砂を送り込む。
工事はWTO調達案件で、西松建設・大豊建設・植木組・池井組JVが担う。落札額は52億680万円。地下水に溶け込むガスや、岩盤ではなく砂地という地盤条件、地下水位が比較的高いことなど、新潟市の特性に対応しながらの大型工事。トンネル管の完成は25年度を予定する。
なお、第1期工事は今後、27年度まで幹線のトンネル管に接続するバイパス管としてけやき通り下他に管路を整備する。第2期工事は幸西ポンプ場本体の建設と万代排水区のバイパス管を整備。整備期間は24年度から35年度を予定している。
【写真=発進ボタンを押す関係者ら、立坑から望むシールドマシン】