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一般会計は7973億円/「本格回復型予算」を編成/県の18年度当初予算案

2006/02/02 群馬建設新聞

 小寺弘之知事は1日、県の18年度当初予算案を内示した。一般会計予算額は、対前年度比0・1%増の総額7973億2750万円となった。小寺知事は新年度予算について「本格回復型予算」とネーミングし、編成にあたっては「景気の回復をすみずみまで」「弱者を守る」「群馬の未来を拓く」「平成の大合併」「行財政改革」--の5本柱のもとに設定。予算案に盛り込まれた主な新規事業としては、近代美術館本館改修工事費1億2800万円(総事業費約13億円)前橋商業高校改築基本設計委託費2200万円(同約25億円)、伊勢崎警察署単身者用宿舎整備費1億円(同2億円)、板倉ニュータウン第3期造成工事費1億5000万円、群馬大学との共同事業として実施する重粒子線治療施設基本設計費1億円--等を盛り込んでいる。また、建設産業への支援として、18年度にぐんま建設産業再生支援本部を設置、この事業費として1億5000万円を計上している(主要事業一覧表を4面~7面に記載)。

 小寺知事は、内示の記者会見で、今回の予算のキャッチフレーズを本格回復型予算としたことについて、全体として景気は回復していると云われているが、うまくいかない産業があることや、中小零細企業へしわ寄せが行っていることを指摘し、「まだ実感が伴わない人が多いため」と説明。

 また、県単独公共事業については、「北関東自動車へのアクセス道整備などによって、商業施設の郊外出店や企業立地が好調になるなど、公共事業の効果は大きい。しかし、いつまでも増加していけば(財政状況は)大変なことになってしまう。できれば平成2年度(250億円規模)のレベルに戻したい」と述べつつ、「ただ、急激にブレーキをかけるとその影響は大きいので、政治的判断で(減少幅を)ゆるやかなカーブにした」と一定の配慮を講じたが、結果的に単独公共事業費は対前年度比マイナス15%と大幅減となった。このことについては、「建設業だけでなく、痛みを皆で分かち合うため、さまざまな所で経費縮減を図った」と説明したうえで、「知事をはじめ特別職の報酬カットを検討しており、2月議会へ条例改正の議案を上程したい」と、理解を求めた。公共事業の対前年度比の割合は、補助公共がマイナス7・8%の577億円(前年度626億円)、単独公共がマイナス15・0%の306億円(同359億円)。

 この一方で、地域に密着する県民局の機能を一層強化するため、緊急的対応が必要な事業への対応として、地域調整費へ新たに地域公共事業調整費3億円を設定。これによって地域調整費全体額は、17年度に比べ1・9倍の増額となった。

 18年度当初予算案に盛り込まれた主要事業は次の通り(<1>事業費<2>所管課<3>事業内容)。

【近代美術館本館改修】=<1>1億2800万円(総事業費約13億円)<2>教育委員会文化課

老朽化により空調設備等が機能低下していることから機器の更新及び耐震補強工事などを行うとともに、アスベスト含有材が確認されたため、除去工事を行う。今年度から設計に着手しており、業務は同施設の設計を作成した磯崎新アトリエ(東京都港区赤坂9-6-17電話03-3405-1526)へ随意契約で委託中。現在、同館はアスベストの関係で12月19日から休館となっている。施設規模は、RC造2階一部3階建て、延べ床面積1万2530㎡(現代棟の2618㎡含む)。このうち、今回の整備対象施設は、既設棟(延べ床9912㎡)。工事期間は、18~19年度までの2か年を考えているが、18年度にそれぞれの工事は関連性があるためアスベスト除去、内装等をまとめて発注する方針。

【前橋商業高校改築基本設計】=<1>2200万円<2>教育委員会管理課

高校改革の一環として、前橋商業高校と前橋東商業高校を19年4月に統合することに伴い、必要な整備を行うもの。統合高校は、現在の前橋商業高校に設置され、校舎等を改築する。現在の校舎は、教室棟、管理棟、特別教室棟などで構成、総延べ床面積は約7000㎡。新校舎については、敷地内南側の別の場所へ建設する。敷地を拡張しないで整備するため、今の考えでは新校舎は1棟に集約化し内部にセミナーハウスや第2体育館等を併設する予定。このため、高層施設になるものと見込まれる。新年度は、基本設計を作成する方針で上期委託を目指す。なお、既存の体育館やプール等は残し今後も使用する。

【地域防災拠点校耐震化推進】=<1>3億1418万7000円<2>教育委員会管理課

避難場所に指定されている県立学校の校舎等の耐震改修工事を行うもので、18年度は2校の管理教室棟で工事を実施するほか、次年度以降の工事に備えた設計を2校で実施する。工事を行うのは、桐生高校と桐生工業高校。桐生高校の管理教室棟は、東西に長い形状をしており、3期に分けて推進。新年度は、最終の3期工事として西側の約2132㎡を対象に補強を施す。設計は現代設計(伊勢崎市連取町3083-2電話0270-23-5433)が作成。また、桐生工業高校の管理教室棟は、RC造4階、5126㎡で、18年度から3期に分割して実施。設計は、福島建築設計事務所(前橋市日吉町1-3-6電話027-231-3060)が手がけた。一方、設計を作成するのは高崎高校と万場高校で、いずれも体育館を対象としている。

【がんセンター新病院建設】=<1>82億8415万4000円<2>がんセンター

16年度末から着手している新病院建設工事を進め、19年1月に完成させるとともに外構工事に関わる調査設計を委託する。外構工事は、全体敷地約7・6haのうち、本体部分及び古墳等を除いた約6ha。自然豊かな敷地内には、自然林が既存しており伐採せずに極力残す方針。駐車場は、500台分(平面)のスペースを確保するほか、植栽、通路などを整備。さらに、患者の心が癒せるようなホスピタルパーク的な緑地整備を行う。設計は、本体建物の設計を手がけた日本設計(東京都新宿区西新宿2-1-1電話03-3348-0315)へ、随意契約での委託が有力。なお、検討されていた緩和ケア施設の設計費は、今回の内示額には含まれていないが、18年度内の補正対応も考えられる。

【地域結集型共同研究】=<1>902万円<2>新政策課

独立行政法人科学技術振興機構(JST)の17年度地域結集型共同研究事業に採択され、1月から事業スタートした。県の提案事業は、産学官連携による環境に配慮した地域産業創出プロジェクト。本県は首都圏の水ガメとしての水源地と全国有数の畜産業及び観光地が近接している中での環境問題を解決すべく、家畜排せつ物を有効活用しようとするもの。具体的な開発目標は2つで、一つ目は糞の固形分処理。群馬大学の宝田高額部長をリーダーに低温ガス、高効率エネルギー変換技術を開発。二つ目は、尿の液体分の処理と臭気対策。群馬高専の小島副校長をリーダーに開発する。事業費は、約24億円で2分の1を同機構が助成し、残り半分は県や参加企業などが負担する。事業期間は、18年1月1日~22年12月31日までの5か年。現在、県内で家畜が排出するたい肥は年間約300万tで、このうちの260万tは農地に還元できるが、残り40t余りの余剰が出ており、県外への搬入や産業廃棄物として処理している。研究にあたっては、県産業支援機構を中核に産学官連携で推進していく体制をとる。とりわけ、企業化支援として市場ニーズや特許等を視野に、前橋商工会議所の曽我会頭を統括とし、企業のトップや畜産業者などで企業化促進会議を設けて支援する。また、県の群馬産業技術センターや畜産試験場、群馬大学、前橋工科大学、群馬工業高等専門学校等とともに、産業界からはヤマト(前橋市)、明電舎(東京都)など12社が参加。なお、他の10社については企業開発の関わるプライバシーのため非公表。18年度は、様々な実験を行いながら、その状況にもよるがプラントの設計までこぎ着けたい考え。

【ぐんま建設産業再生支援】=<1>1500万円<2>監理課

厳しい経営環境にある建設産業への支援として相談体制の強化、経営状況分析等を行うとともに、経営力、技術力の向上、新事業展開等に向けたセミナーを行うなど、全庁的に支援する。また、地域に根ざした総合力のある建設業者育成を図るため県庁内に小寺知事を本部長とするぐんま建設産業再生支援本部を設置する。



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