土木学会は、選奨土木遺産として県内から新潟市秋葉区の阿賀野川満願寺「基準点標石」を選定した。阿賀野川では初となる国直轄による河川改修事業着工時に設置された基準点で、河川の形を決める原点となり、現在の価値で約210億円が投じられた大改修事業を後生に伝える標石として土木遺産とした。
阿賀野川の氾濫から農地や集落を守るため、1915年に内務省新潟土木事務所(現在の北陸地方整備局)が、五泉市馬下から河口部までの約35㎞での大改修に着手し、現在の阿賀野川となった。大改修着手から、ちょうど100年後の2015年8月に、阿賀野川河川事務所満願寺出張所の後藤博正所長(当時)が、満願寺公園で草刈りをしていたところ、独特の書体で「内務省」「陸地測量部」と彫られた標石を発見。阿賀野川大改修と地域発展の礎を築いた基準点標石であることが分かり、当時を語る貴重な土木遺産として、現在は満願寺公園内に移設、保存されている。
標石は高さ44cm、底辺32cmで上面は底面よりやや小さい台形状。上面部に方位図が刻まれており、側面には「陸地測量部」や「内務省」の文字などがある。
石の材質は明治初期から安田町で産出されていた花崗岩の草水石(草水みかげ・安田石)と考えられており、石自体も国会議事堂、新潟県庁、弥彦神社などにも使用されており、貴重なもの。
県内では同学会推奨土木遺産に「円上寺隧道(長岡市)」や「萬代橋(新潟市中央区)」などが選定されており、今回で15施設目の認定となる。
11月20日の「土木の日」記念講演会において認定書の授与式が執り行われる。
【写真=満願寺基準点標石】