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国土交通省,長野県建設部

砂防現場から“地域の守り手”活躍発信/国交省、県、地域建設企業が初の試み

2023/10/27 長野建設新聞

 国土交通省砂防部と県建設部は24日、6月に飯田市名古山地区で発生した土砂災害での活動を題材としたオンラインミーティングを開催した。対応にあたった地域の建設企業も参加し、発災から応急対策までの情報を共有。得た知見は今後の事業等に生かしていく。

 気候変動により災害が激甚化・頻発化する中、砂防工事の担い手である地域建設企業との連携強化を図るとともに、その活躍に光を当て、情報発信していこうと企画された試みで、本県では初めて開催された。国交省砂防部の蒲原潤一保全課長や県建設部の吉村元吾砂防課長などが出席し、災害対応にあたった池端工業(飯田市)の池端清二社長も参加した。

 題材としたのは6月2日の大雨により発生した大堀沢の土石流災害。この雨では飯田市の広範囲で被害が発生。県は旧南信濃村および上村の応急対応について、事前の取り決めに沿って池端工業、近藤工務店、南建設、山崎建設の地元4社で構成する小規模維持補修JVへ依頼した。池端工業が担当した名古山地区は国道418号や市道に大量の土砂が流出し通行できなくなり、一帯は一時孤立。懸命な啓開作業により2日後には規制解除に漕ぎ着けた。池端社長は「この地域は昔から土砂災害が頻発しており、日頃からそうした心構えでいる。今回は道路が通行止めになったが、入ってきてしまう車もあり、この対応にも苦労した」と振り返った。

 県は7月、国交省による災害関連緊急砂防等事業の採択を受けて、二次災害を防止するための対策に着手。8月には応急対策工として仮設の導流堤や工事用道路が完了し、現在は堰堤建設地の上部に土石流防止柵を設置する作業が行われている。

 仮設導流堤の設置にあたっては、NETIS登録製品「パワーモンスター」を採用。同製品は大型土のうを多段に積み、繊維ロープと繊維ネットを用いて一体化するもの。県下伊那南部建設事務所の村松賢一課長は「現地を見て大型土のうを積むだけでは心もとないと感じた。短期間で、かつ現地で作ることができ、強度のあるものを検討し、調査にあたったコンサルの意見も参考に決定した」と経緯を説明。施工者は「繊維ロープの締め具合などに気を使ったが、設置自体それほど難しいものではない。現場状況によってだが、応用は利く」と感想を伝えた。

 一連の対応では重機や土捨て場の確保、盛土材のストックなど、地域に根差した企業ならではの経験が発揮された。一方で池端社長は「この地域は就労者の3分の1が建設関係という時代もあった。しかし、人口減少や都市部への人口流出により、建設業に携わる者は減少している。高齢化も進んでいる」と吐露。今後、機動力が低下していくことを危惧した。村松課長は「被災地の旧南信濃村や上村は飯田市と合併したが、地域に限定すると高齢化率は60%ほど。隣接する天龍村に至っては県内で最も高い。入札制度において若手技術者の育成に資する取り組みも運用しているが、若手が少ない地域では使いずらいという話しも聞く。いかにして、この地域に根差した若者を確保していくが大きな課題」と話した。

 ミーティング後、県の吉村砂防課長は「地域の安全は地域に根差した建設企業によって支えられている。地域の守り手である建設企業の活躍を、より多くの人に知ってもらいたい」と思いを語った。

 なお、本堤工については11月中に工事入札を公告し、年内の契約を目指している。

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