下水道マンホール蓋の更新工事に今年度から小山市が着手し、宇都宮市、さくら市、高根沢町は2024年度から点検を予定している。激甚化、多発化する集中豪雨や自然災害によって、マンホール蓋の浮上や不具合による事故の可能性が高まっており、9月4日の大雨では宇都宮市内の2カ所で蓋がずれる事例が確認された。マンホール蓋の標準耐用年数は車道部で15年(歩道部30年)。今後、老朽化した蓋が増加の一途をたどり、国のストックマネジメント支援制度(以下、ストマネ)の活用など財政支出の平準化を図った計画的な更新が求められる。各自治体の取り組み状況をまとめた。
県流域下水道のマンホール蓋数は約2000枚。県はストマネ計画策定前の点検で健全度ⅠとⅡの約800枚を計画に位置付けており、17年度から更新に着手した。
22年度までに約360枚の交換が完了。今年度は上流、中央、巴波川、北那須の4処理区で合計約100枚の交換を予定。道路管理者との協議などで変動するものの24年度以降は約300枚となり、計画期間の28年度までに完了する見通し。所管の県都市整備課下水道室は「限られた予算の中で計画に位置づけた蓋の更新を着実に進めていきたい」としている。
宇都宮市内で9月に蓋のずれが確認されたのはいずれも合流式の区域。急激に流入した雨水によって圧縮された空気や水がマンホール内部の調整代を破壊して周囲の道路舗装の下に入り込み、道路表面を破壊したと見られる事象などが起きた。
宇都宮市上下水道局によると、市内の蓋の数は約8万枚。これまでは道路舗装修繕など他事業に併せて浮上防止装置がない旧型の蓋を交換していた。24年度からはストマネに基づく点検を古いものから進めていく考え。
小山市は22年度、ストマネによる蓋の調査を幹線道路の国道4号、50号と県道で実施。10月に交換工事を発注したところ。道路修繕と併せて更新することもあるとしている。
さくら市はストマネで24年度から管渠と併せて蓋の点検を実施。大田原市は策定中の計画の中で蓋の位置付けを検討する。
ストマネで蓋の更新を実施している市は足利、佐野、鹿沼、真岡、下野、日光。足利市は毎年約100枚、佐野市は毎年約200枚、真岡市は毎年約50枚を更新。足利、佐野、真岡市とも蓋の改築工事を単独で発注。日光市は国庫補助が適用される年度に実施しているという。
矢板市はストマネで管渠の点検と併せて蓋を点検しており、特に型が古いものは個別に対応。今年度は舗装修繕と併せて3枚を交換した。
那須烏山市は着手しておらず、栃木市は道路改良などに併せて実施。那須塩原市はストマネに基づく更新を完了している。
町で蓋の更新に取り組んでいるのは那須、那珂川。那須町は供用から約40年が経過する湯本地区の古い蓋を予算の範囲内で毎年2~3枚程度交換。今後は管渠とマンホールを点検していく中で交換の必要性を判断していく。
那珂川町は総合地震対策計画に基づく管渠耐震化と併せて蓋の交換を実施。蓋をボルトで固定する措置なども講じている。ストマネは今年度中に策定する予定。
野木町は昭和50年代造成の住宅団地で蓋交換の実績があるものの、当面実施する予定はないとしている。
上三川町は管路施設と併せて蓋の点検を実施。点検結果に基づき対応していく。同町は過去の大雨を踏まえ、雨水幹線で穴空き蓋への交換が完了している。
壬生町も管路施設と併せた点検を実施。供用開始の時期が最も早かったおもちゃのまち地区で重点的に進めており、他の地区でも順次点検していく。
高根沢町は24年度から点検に着手し、必要に応じ更新を実施していく考え。
芳賀郡の4町は蓋交換未実施。芳賀、茂木、市貝は公共下水道の供用開始から間もなく20年で比較的施設が新しく、ストマネも未策定。芳賀町は処理場増設後にストマネ策定を検討する。
下水道用マンホール蓋製造業者で構成される日本グラウンドマンホール工業会によると、マンホール蓋数は全国に1600万枚あり、30年以上経過するものが350万枚。10年後には700万枚と推計。年間の更新数は10万枚で160年の改築サイクル。現在の健全度を維持するには年間35万枚の更新が必要と試算する。
マンホール蓋は道路という過酷な環境下にあり、他の下水道施設に比べて耐用年数が短く、不具合や事故が多い。同工業会では「老朽化に集中豪雨や地震の被害が加わることで蓋に関連する事故や不具合が拡大する。計画的な改築は苦情や事故の未然防止、浸水や地震対策、不明水対策として有効であり、将来を見据えた平準化した更新が必要」と訴える。