県は、2024年度から日光市中宮祠の男体山で小薙と大平薙を主体に復旧治山事業に乗り出す。事業期間は約10年間、事業費には9億5000万円を試算した。県県西環境森林事務所によると、年内に対策の必要な箇所の調査をまとめ、年度末にも整備計画を策定。24年度は小薙右沢2カ所の実施設計を予定している。対策箇所の調査は安田測量が担当。
男体山は19年東日本台風による豪雨で、南東斜面の小薙左沢第1支渓の上流域が崩壊。保安林管理道表男体山線を含む渓流約100mが被災した。多量の土砂が流出し荒廃地は1万500平方mに及んだ。
県は19年度から復旧工事に着手。表男体山線を20年度、22年度には復旧工事が完了したものの、下流域には流出土砂が堆積。土砂流出を防止するため、谷止工や流路工を継続施工し24年度の概成を予定している。
先行して今年度から資材搬入路の表男体山線の舗装工の打ち換えを実施。事業期間は29年度まで7年間。全体延長は6500mで、うち270mの施工を進めている。開設後の経年劣化で路盤沈下や舗装工に亀裂が生じているためで、安全な走行環境を確保する。
南東斜面の崩壊地は約50年間、林野庁が鬼怒川地区民有林直轄治山事業で整備。10年に概成し県に移管された。移管後県は大薙や小薙の山腹崩壊の状況を調査。荒廃渓流が激しく19年度まで10年間の復旧治山事業全体計画を策定し整備を進めてきた。
24年度から着手する復旧治山事業は、概成地の施設の老朽化に加え、概成地上部などで豪雨や山岳部特有の凍上融解作用などに起因する新たな荒廃地が発生。また、荒廃地の拡大なども見られるため新たに整備計画を策定。対策に着手する。
男体山は日光火山群から独立した富士山のようなコニーデ型山容。溶岩と火山砕屑物とが交互に堆積して形成された成層火山。山頂から四方にV字型の浸食谷が発達している。
深い谷は薙刀でえぐったような形状から薙と呼ばれ、深い箇所では100mにも及ぶ。代表的な崩壊地が南東斜面の大薙や小薙で、1902年の台風では観音薙が形成されるなど、大小あわせ約20カ所が存在する。