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観光経済の波及効果に/富士山登山鉄道構想で

2023/11/21 山梨建設新聞

 県は、富士山登山鉄道構想を推進する。来訪者であふれる富士山は環境課題を多く抱える。五合目へのアクセスにLRT(次世代型路面電車システム)の軌道を敷設して、運行本数の制限や完全予約制を導入し、来訪者をコントロールするとして同構想が提案されている。鉄道自体を観光資源とし、本県の観光経済に波及する効果にも期待される。9月県議会の代表質問で、渡辺大喜議員が現在の取り組み状況と今後の進め方について県に求めたもの。

 富士山は世界遺産登録から10年を迎え、登山シーズンは多くの来訪者であふれている状況にある。放置されるごみや車からの排気ガスなど環境への影響が大きな課題となっている。

 課題を解消する方法として長崎幸太郎知事は「富士山五合目のアクセスに利用されている富士スバルラインにおける来訪者のコントロールが必要」と述べた。富士スバルラインは道路法上の利用のため、法令に規定された利用がない限り車両の通行を規制することができないという。そのため県では、マイカー規制など現行法で取れる対策を進めてきたが、その効果は限定的なもので、自動車がスバルラインを通行する限り来訪者のコントロールは困難とした。

 富士山五合目へのアクセス方法を抜本的に変えるものとして、富士山登山鉄道構想が提案されている。同鉄道は既存のスバルライン上にLRTの軌道を敷設するため、自然を破壊するような大規模な開発はないとしている。軌道を敷設する際に、電気や上下水道などのインフラを併せて整備することにより、関係者や地元自治体の負担軽減も可能という。一般車両の通行をできなくした上で、運行本数の制限や完全予約制の導入により、来訪者コントロールが可能となる考え。

 富士山の環境に調和した外装と振動が少ない鉄道という上質な空間で、大きな車窓からの眺望や途中駅での散策など、特別な体験も期待できる。自動車に比べると氷雪に強く、冬の観光が可能となり、夏に集中する来訪者を分散化することも可能となる。

 また、五合目施設の景観を自然と調和させ、シェルター機能を持たせることで来訪者を確保していくとしている。

 鉄道自体が観光資源となり、さまざまな観光事業の展開も期待されるなど、麓の地域だけでなく本県の観光経済に大きな波及効果となることにも期待できるという。

 長崎知事は「今後も調査検討を進め、地元や県民と広く議論を深めていく。議論の素材となる調査検討を加速化させる必要があり、所要経費を9月補正予算に計上し丁寧な合意形成を図る」と答弁した。

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