県建設業協会長野支部(飯島泰臣支部長)は4日、県現地機関との意見交換会を長野市のホテル信濃路で開催した。支部は来年4月から始まる時間外労働規制を踏まえ、書類簡素化の取り組みの徹底や工期設定にかかる工程表の開示、ICT活用工事の適切な対応などを求めた。
会合には県から長野建設事務所の青木謙通所長をはじめ、管内機関の職員計26人が出席。支部側は会員42人が参加した。
冒頭、飯島支部長は「皆さんのご尽力によりここ数年、一定程度の予算を確保いただいている。しかし、深刻な人手不足、資材の価格上昇や品薄と、取り巻く環境は非常に厳しい。加えて来年4月からは罰則付きの時間外労働規制が適用される。われわれには皆さんと共に県民の安全安心、財産を守る責務がある。このためには安定した工事量と適正な利潤が必要」と訴えた。
これを受けて青木所長は「予算なくして県民の安全安心は守れない。きょうは相互に情報交換し、さまざまな問題を共通認識とし、改善に向かっていければ」と応じ、また年末を迎え、あらためて労働災害の防止、安全対策の徹底を強く求めた。
議事では各現地機関が今後の発注見通しを説明した後、意見交換に移った。支部はまず、時間外労働規制や人材不足により、今後工期の妥当性の確認が一層必要になるとし、根拠となる工程表の公表を要望。県は「一般的な現場では、国の工期設定指針に準拠した標準工期算定式により算定できるとしているが、時間外労働規制の適用に向けて、工程表の開示についても検討している」と回答した。
また、現場補助員や現場管理2人体制の経費を別途計上するよう求めたのに対しては、「国では実態調査を基に、必要に応じて積算基準を改定してきており、引き続き国の動向を注視していく」とした。
電子契約については「現行は落札決定翌日から7日以内(土日を含む)に契約することとしている。受注者側は問題ないが、発注者は処理に時間を要するためか紙による契約を求められるケースがある。契約までの期間を国と同様『土日を除き7日以内』に変更し、しっかりと電子契約に対応する形がよいのでは」と提起した。
施工における課題の議論では「ICT施工を申し出たところ難色を示された」と県のスタンスを質したのに対し、県は「建設部では入札公告する全工事をICT活用工事の対象とし、本年10月には対象工種も拡大している。積極的に推進している」との方針をあらためて示した。
また創意工夫・社会性等の評価について、支部が「今後に生かすためにも評価した項目を教えてほしい」と要望。県は「当該工事の受注者であれば、口頭請求により考察項目別運用表など評定根拠の公表が可能。発注者に問い合わせてほしい」と伝えた。
工事書類関係については「当初提出の施工計画書の内容は『工事概要と施工方法(準備工事)を最低限記載し、その他は確定している内容のみで可としているはずだが、指導監査において『施工方法の記載がない』と指摘された」「情報共有システムを活用する工事では、紙と電子データの二重提出を求めないとしているが、監督員によっては原本提出を求められる。特に指導監査時に紙べースを求められることが多くある」などと事例を挙げて、工事書類簡素化ガイドラインの順守を求めた。一方で、発注者からの求めではなく、受注者が自社の管理上、不要とされる書類を作成・提出しているケースがあることも紹介された。
さらに「ガイドラインで不要とされている書類を提出した場合に減点する考えはあるか」との質問が挙がり、県は「地域を支える建設業検討会議などにおいて、不要とされている書類を提出しなかった工事における工事成績評定への加点など検討している」と伝えた。
このほか支部は「総合評価において現場代理人・担当技術者を主任(監理)技術者と同等に評価してほしい」「建設キャリアアップシステムのリーダー・カードタッチの費用計上について、購入だけでなくリースも認めてほしい」などと要望。災害復旧工事中の二次災害による損害について受注者負担を求めない規定について、適用方法なども確認した。
青木所長は総括で「二次災害の受注者負担軽減は、協会がデータをそろえ全建を通じて国へ要望し、建設工事標準請負契約約款第30条が改正された経緯がある。県独自では対応が難しいものについては、国へ働き掛けることも必要。また指導監査は、過当競争で平均落札率が大幅に下落した時期に品質を担保するため導入したもの。受注環境が改善され、また企業と同様、県も人手不足が深刻になる中で、今も全数検査が必要なのか。全体の最適化を考える時期に来ているのではないか」と見解を述べた。
終わりに小山田雄治副支部長は「こうして話してみると、われわれも発注者も考えていることは一緒。互いに手を取り合い、県民が安全で安心して暮らせる社会をつくれるよう、良い関係を築いていきたい」と締め括った。