県は、下水等汚泥を利用し肥料製造やリン回収可能性の検討に着手する。化学肥料の原料となる尿素、リン酸アンモニウム、塩化カリウムは輸入に依存。輸入国の偏在性や政情不安を背景に価格上昇が続いている。県下水道室によると、国が今年度汚泥肥料利用における手順書を作成。2024年度には手順書を踏まえ、調査検討業務をコンサルに委託する。製造・販売が可能と判断できれば肥料化センターなど施設の建設も検討する見通し。
国は15年に下水道法を改正。バイオマスとして高いポテンシャルを保有する下水汚泥について、全国の下水道管理者に燃料や肥料(コンポスト化)の再生利用を努力義務化した。
肥料成分のリンは農作物の育成に不可欠。化学肥料のリンは全量を輸入に頼っており、全体の4分の3を中国に依存。21年半ば以降、穀物需要の増加や原油・天然ガス価格の上昇に加え、中国の肥料原料の輸出検査の厳格化に伴い、国際価格が上昇基調で推移している。
3月に国は肥料の国内生産を目的に下水汚泥の肥料化の検討を全国の下水道管理者に通知。下水汚泥はリンや窒素などの資源を含有。年間汚泥発生量のうち約5万㌧のリン含有が試算されている。
県は下水汚泥を有効活用する目的で、02年下水道資源化工場を供用。資源化工場は流域6処理場、公共30処理場の汚泥と汚泥焼却灰を集約処理している。県内全体の汚泥発生量は年間約7万㌧。このうち約4万㌧を資源化工場で処理している。
県と資源化工場に納入する17市町は国の通知を受け勉強会を開催。下水汚泥の肥料化やリン回収が可能か、コンサルを交え24年度に調査する。
下水汚泥はリンや窒素などとともにヒ素や水銀など有害な重金属を含んでおり、成分次第では肥料に不向きとされるケースも多い。
21年度県内45カ所の処理場から発生した汚泥量は7万1514㌧。うち82・2%の5万8796㌧が有効利用されている。内訳はスラグ1万91㌧(14・1%)、セメント原料等3万9933㌧(55・8%)、コンポストによる肥料が8277㌧(12・3%)。
本県では那須町が湯本浄化センターの汚泥をコンポスト化。流域では鬼怒川上流浄化センターでコンポスト化を実施していたものの、東日本大震災が発生。福島第1原発事故で放射能漏れによる汚染が顕在化し中止した。
肥料化は民間委託によるコンポスト化のほかに、下水道管理者が堆肥化センターなど製造施設を建設。流通・販売するケースもあり、全国では佐賀市が実施済み。青森県でも日量70㌧の汚泥が発生する岩木川浄化センターで肥料化センターの建設を始める。
下水処理場は全国約2000カ所。半分の約1000カ所で肥料利用に取り組んでいる。実際は複数の利用・処分の一方法として肥料利用を実施する処理場が多く、全発生量に対する割合は1割にとどまっているという。