国土交通省宇都宮国道事務所は、日光市の国道121号川治防災連絡調整会議の結果をまとめ、近接する2トンネルの施工計画検討や工事用道路の早期着手に向けた手続きを進めていく。直轄権限代行区間はバイパス北側3・4㎞。このうちトンネルが3㎞、1級河川鬼怒川を渡河する橋梁が300mを占める。工事用道路は国有保安林区域外の鬼怒川左岸を進入路にトンネルや橋梁に着手。構造物施工に備え保安林解除など各種法的手続きを進める。
3㎞のトンネルは地下で野岩鉄道葛老山トンネル、五十里ダム貯水池と川治ダム貯水池を結ぶ導水トンネル、県道川俣温泉川治線葛老トンネルが近接する。
地質調査の結果から、新たに北側の五十里側トンネル坑口部に大規模崩落跡を確認。1686年に発生した天和日光地震に起因する葛老山地すべり跡。地震発生時に男鹿川が堰き止められ天然ダムを形成。40年後に決壊し下流の多くの集落に甚大な被害をもたらした五十里洪水。
3カ所のトンネルのうち鉄道トンネルと導水トンネルが非常に近接。地山の緩みやトンネル掘削時の崩落対策など検討が必要と判断。2トンネルの交差箇所の施工計画、着工に向けた技術的課題を精査する。
バイパスルート3・4㎞は日光国立公園に位置。測量や構造物の概略設計から約7割が国有保安林に指定。工事着手までに必要な手続きは森林法の保安林解除が一般的に3年。自然公園法による国立公園内工作物新築許可と河川法の河川協議手続きが1年かかる。
橋梁は橋長300m、幅員8mで上部形式に鋼4径間連続トラス桁として予備設計をまとめ修正設計に移行した。下部工は深礎杭ラーメン式橋台2基、深礎杭張出式橋脚3基で構成する。
橋梁北側のトンネルは延長約3㎞。予備設計を踏まえ、トンネルの線形や構造を検討する。
橋梁とトンネルとの間には、川治温泉街へ概算延長100mのアクセス路を確保する。アクセス路は橋梁やトンネルの工事用道路として活用。
川治防災は連続雨量200㎜で通行止めとなる川治温泉街を迂回し、西側の山間部に7・4㎞のバイパスを整備する事業。このうちトンネルや長大橋が連続する北側3・4㎞を直轄権限代行事業として2019年度に事業化された。